平成8年度 委託研究ソフトウェアの提案

(17) 論理型言語 KLIC を用いた概念学習システムの研究

研究代表者:伊藤貴康 教授
      東北大学大学院情報科学研究科




[目次]

  1. 研究の背景
  2. 研究の目的
  3. 研究内容
  4. 研究体制/研究方法
  5. 想定されるソフトウェア成果

[研究の背景]

論理型言語を用いた知識ベースシステムにおいては、述語論理を用いて概念や事実などの知識が表現されて知識ベースが形成される。知識ベースの高度化の研究のため、制約知識を利用して新しい概念や高度な概念を学習する概念学習システムを設計し、第五世代コンピュータプロジェクトの核言語として開発されたKLICを用いて、その処理系の試作するという予備研究を平成7年度に行った。本研究では、平成7年度における経験をふまえて、述語論理を基にした概念学習システムの設計と作成を行い、学習機能を有する知識ベースシステムとしての評価実験を行う。


[研究の目的]

高度な知識処理システムの実現には、知識ベースシステムの高度化が必要である。知識ベースの高度化の一つとして、概念学習機能を知識ベースシステムに具備させることにより、新しい概念や高度な概念を獲得するアプローチがある。

本研究では、述語論理を用いて表現された概念や事実からなる知識ベースを基に、制約知識を利用して新しい概念や高度な概念を学習する対話型概念学習システムを設計し、その処理系を並列論理型言語KLICを用いて試作する。

処理系の作成に当っては、対話的学習環境の改善と推論操作の並列化に留意した設計・開発を行う。また、システムの実験評価についてもこれらに留意した評価を行う。


[研究内容]

本研究の概念学習システムは、ユーザが与える事例、制約知識、質問、応答等と、システムに内臓された知識ベースおよび学習・推論機能を基に、新しい概念の学習や高次概念の学習を行い知識ベースの高度化を目指すものである。

学習・推論機能としては、論理型言語および述語論理を基にして、
a) 帰納的学習アルゴリズム
b) 類推による学習アルゴリズム
c) 高次高階概念学習アルゴリズム

を実現する。

設計・作成する概念学習システムは、次のような機能を備えたものとなる。
* ユーザインタフェース
* 制約知識の獲得機能、更新機能
* 特例化学習と一般化学習機能を事例の性質によって選択する機能
* 類推による学習、および、高次概念の学習機能
* 知識ベースに対する更新・参照・型付け・構造化などの操作機能

また、システムの主要部分は、
* 制約知識獲得モジュール
* 学習モジュール
* 知識ベース

から構成される。

システムの実現には、6 CPUのDEC7000 とその上の並列論理型言語 KLIC が用いられ、学習・推論操作の並列化とその評価実験も行う。
評価実験においては、学習機能の評価、並列化効果の評価を行う。
また、応用としては、貿易データベースへの応用を試みる。


[研究体制/研究方法]

(1) 研究体制
       氏名         所属
研究代表者 伊藤 貴康  東北大学大学院情報科学研究科情報基礎科学専攻教授
研究協力者 川本 真一  東北大学大学院情報科学研究科情報基礎科学専攻助手
研究代表者 大友 雅彦  東北大学大学院情報科学研究科情報基礎科学専攻技官

(2) 研究の方法

* 概念の表現法: 述語論理および論理型言語を使用
* 学習の方法: 制約知識に基づく帰納的学習、類推学習、高次概念学習
* システム実現法:システムの形態:対話型知識ベースシステム
使用言語: 並列論理型言語 KLIC
使用計算機:共有メモリ型並列計算機 DEC7000 


[想定されるソフトウェア成果]

(1)作成されるソフトウェア名称

  KLICを用いた概念学習ソフトウエア: <仮称> CONCEPT-LR 

(2)そのソフトウェアの機能/役割/特徴

KLICを用いた概念学習ソフトウエア CONCEPT-LR は、次のような3つのモジュールからなる。

* 制約知識獲得モジュール
ユーザから呈示された制約知識を知識ベースの対応する各サブ知識ベースに追加するモジュールである。

* 学習モジュール
帰納的学習モジュールと類推による学習モジュールを基本機能として具備し、高次概念学習機能も有する。

* 知識ベースモジュール
推論学習の対象となる知識ベースであり、概念データベース、事例知識ベース、領域知識ベース、類似知識ベース、再帰構造知識ベース、タイプ階層的知識ベースなどから構成される。

(3)ソフトウェアの構成/構造

トップレベルは、
  * ユーザインタフェース
であり、対話的に
  * 制約知識獲得モジュール
  * 学習モジュール
が呼び出される。

制約知識獲得モジュールと学習モジュールは、知識ベースに対する参照と更新を行う。
ソフトウエアは、並列論理型言語 KLIC で作成され、実行マシンは、6台のDEC-Alpha Processorからなる共有メモリ型計算機DEC7000であり、OS は OSF/1 である。

(4)参考とされたICOTフリーソフトウェアとの関連

  ICOTからリリースされている並列論理型言語 KLIC を使用。

(5)使用予定言語および動作環境/必要とされるソフトウェア・パッケージ/ポータビリティなど

使用言語は、並列論理型言語 KLIC であり、動作環境は、OSF/1 の下で動作する DEC7000 である。
また、SPARC-Center上でも動作可能とする予定。

(6)ソフトウェアの予想サイズ(新規作成分の行数)

  KLIC program: 約3000行

(7)ソフトウェアの利用形態

* 知識データベースの高度化への利用。
  論理によって表現された知識ベースの高度化を対話的学習機能を用いて行う。
* 学習機能を有する並列推論知識ベースシステムとしての利用。

(8)添付予定資料

* システムの説明書(含、方式説明、システム使用法)
* 評価実験報告書(含、応用事例)


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