平成8年度 委託研究ソフトウェアの提案

(9) 協調ロボットプログラミング言語/システム

研究代表者:溝口文雄 教授
      東京理科大学理工学部経営工学科




[目次]

  1. 研究体制
  2. 2年目の研究内容
  3. 想定されるソフトウェア成果

[研究体制]

       氏名        所属
研究代表者 溝口 文雄  東京理科大学理工学部経営工学科教授
研究協力者 大和田勇人  東京理科大学理工学部経営工学科講師
研究協力者 西山 裕之  東京理科大学大学院修士2年
研究協力者 飯塚 圭一  東京理科大学大学院修士2年
研究協力者 本多 啓一  東京理科大学大学院修士1年


[2年目の研究内容]

1年目ではKLICによるロボットの協調作業をいかに実現するかを示し,具体 的な作業を通じてKLICの有効性を明らかにした.しかし,KLICは汎用性のある 並列言語であるため,ロボット特有の作業命令を記述すると冗長になってしま う.すなわち,KLICは協調ロボットプログラミングの低レベル言語として位置 付けられる.

2年目は,このような問題を解決して,高レベルの協調ロボットプログラミ ング言語をKLICを基本にして開発する.さらに,ロボットの協調作業を毎回ロ ボット間で通信しながら行なうのではなく,大局的な作業を帰納的に学習して, より効率のよい協調作業を実現する.このために,帰納論理プログラミングシ ステムをKLICで開発すると同時に,KLICプログラムを自動導出する方法も構築 する.以上のシステムを実際の作業で実現し,本システムの有効性,限界を明 らかにする.具体的には,千葉県工業技術センターの展示会にデモ出展し,様々 な角度から評価を行う.


[想定されるソフトウェア成果]

(1)作成されるソフトウェア名称
協調ロボットプログラミング言語/システム

(2)そのソフトウェアの機能/役割/特徴

ロボットの協調作業はロボット工学における古くからの中心的な課題であっ たが,そこで使われているプログラミング言語は,セマフォなどの命令を中心 とした命令型言語になっていた.そのため.複雑な作業を記述したプログラム は可読性が悪く,バグも発生しやすい.

本研究はこのような問題に対して,第5世代コンピュータプロジェクトで開 発された並列論理型言語KL1でロボットの協調作業を行なうプログラミングシ ステムを研究・開発する.このシステムでは,並列論理プログラムの性質を活 かして,可読性のよい協調プログラムを効率良く構築することが可能で,従来 のロボット工学に対して新しいソフトウェアの概念を提供することができる. さらに,ロボットの協調作業を効率化するために帰納学習を取り入れるという のは,従来の方法にはないもので,研究上,工業上新しい視点を提供する.

(3)ソフトウェアの構成/構造

ソフトウェアはロボット言語処理系,ロボット間通信のためのCプログラム, 視覚センサーからのデータを取得するためのCプログラムからなる.ユーザの 作成したプログラムは言語処理系を通じて,完全なKLICプログラムにコンパイ ルされる.このプログラムは通信・視覚システムと連動して起動する.

学習システムは,KLICで実現する.単位節で記述された正事例,負事例を, KLICプログラムで書かれた背景知識から,仮説を生成する.この仮説もKLICプ ログラムとなる.

インターフェース部としては,Javaで書かれたプログラムを用意する.これは 遠隔型のシミュレータであり,ロボット作業を実現するプログラムをいかに構 築するかを教育するために利用される.

(4)参考とされたICOTフリーソフトウェアとの関連
KLICを使用.

(5)使用予定言語および動作環境/必要とされるソフトウェア・パッケージ/ポータビリティなど
使用言語:KLIC,C,Java

動作環境:UNIXワークステーション
RS232Cで接続されたマニピュレータ
本システムでは三菱製マニピュレータRV-M1をサポートしているが,それ以外の機種に関しては,ロボットの仕様を本システムで処理可能な形式に従って提供すれば,動作可能になる.

(6)ソフトウェアの予想サイズ(新規作成分の行数)
言語処理系     :10,000行
帰納学習システム  :10,000行
Java インターフェース:10,000行

(7)ソフトウェアの利用形態

 工業高校,大学などのロボット教育システムとして利用可能で,ロボットの 並列処理ならびに並列言語の学習に有効である.さらに工業上では,高度な協 調作業を従来の命令型言語にとって代わることが可能であり,開発効率の高い ロボット言語として使用されるものと思われる.

 しかし,KLICなどの並列論理型言語の認知度は,ロボット工学系の人々には 低い.そのため,ロボット学会等に本研究の成果を積極的に発表し,第五世代 コンピュータ技術を広く普及させる必要がある.研究代表者の溝口は,今年度 から文部省重点領域「知能ロボット」の研究を実施しており,ロボット工学系 の専門家と接する機会が多くなった.これを活用して,ロボット学会の特別セッ ションに本研究を発表する予定であり,研究の普及に努める.

(8)添付予定資料

  ソフトウェア、ソフトウェア仕様書、ユーザマニュアル等


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