平成8年度 委託研究ソフトウェアの中間報告

(14) ゴールに依存した抽象化を用いた法的推論

研究代表者:原口 誠  教授
      北海道大学工学部


1 研究テーマ、研究代表者:
(1)研究テーマ  : ゴールに依存した抽象化を用いた法的推論の研究
(2)研究代表者(氏名、所属、役職): 原口誠(北海道大学工学部教授)

2 記述項目:
(1)研究進捗状況:
本年度の研究目標は,(A)高度知識表現言語に対するGDAの設
計と実装,および(B)領域知識の批判的吟味アルゴリズムの設計
と実装,の2点にあった.(A)に関しては,前年度提案した順序
ソート言語に「ロール制約」を追加した拡張言語に対して,GDA
新方式の第一次実装を完了した.(B)に関しては,GDA出力結
果とユーザの意図が異なる場合に,領域知識を洗練化することによ
り両者の差異を解消する一方式を既に提案した.

(2)現在までの主な成果:
(2a) 高度知識表現に対するGDAの設計と実装: 前年度のGDA
においては,概念階層が持つ概念の is_a 関係の保存条件をGDAに
対する制約とみなし,可能なGDA写像に対するある程度の枝刈りを
実現していた.本年度はこれに加えて,KL/ONE 風の語彙的知識表現
言語が持つロール制約のうち,特にロールの value restriction の
保存条件を新たに追加し実装した.その枝刈り効果はテスト例題でも
既に示されている.
(2b) 領域知識の批判的吟味アルゴリズムの設計と実装:GDAアルゴ
リズムが出力する概念述語(ソートと呼ぶ)間の類似性にユーザが類似
性を認めない場合,本アルゴリズムは起動されるとする.アルゴリズム
が行うべき処理は,GDAによって類似していると判定されたソートの
非共有性質を顕在化し,よって,顕在化後の領域理論に対してユーザの
直観と一致するような類似性のみを出力できるようにすることである.
そのための一方式として,概念の「特徴述語」を求め,非共有性質を表
す新項を導入する方法を提案した.

(3)今後の研究概要:
(3a) 複雑な例題でテストする.現在のところ,商法の類推適用(
代表権を持たない役員に関する条文の類推適用の事例)および代理母
の事例のテスト例題を検討している.またさらに,語彙的知識表現言
語として既に実用段階に入っている Classic (実装言語は Common LI
SP)に対しも,本GDAを実装することも併せて検討する.
(3b) また研究項目(B)については,その実装を本年度中に行う.

(4)今年度目標成果ソフトウェアイメージ 
ソフトウエアの使いやすさというよりむしろ,概念語を定義する際
に必用不可欠なロール記述をも扱うソフトに進化させた点が重要で
ある.なぜならばロールとは概念関係子そのものであり,電子化辞
書とGDAを接続する際のキーとなるからである.
 ソフトウエアのイメージは基本的には前年度のプロダクトと同じ
である.異なる点は新たな入力としてロールを追加したこと,また,
ユーザからの非類似性情報を受けとり,知識を修正するサブシステ
ムを追加し,類似性を批判的に吟味する実験環境(の一部)を新た
に提供する点である.

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