平成8年度 委託研究ソフトウェアの提案

(2) KLIC の視覚的インターフェースに関する研究

研究代表者:田中 二郎 助教授
      筑波大学 電子・情報工学系




[目次]

  1. 研究体制
  2. 2年目の研究内容
  3. 想定されるソフトウェア成果

[研究体制]

       氏名      所属
研究代表者 田中 二郎 筑波大学電子情報工学系助教授
研究協力者 南雲 淳  筑波大学大学院理工学研究科1年
研究協力者 中島 哲  筑波大学大学院理工学研究科2年
研究協力者 馬場 昭宏 筑波大学大学院工学研究科1年


[2年目の研究内容]

本研究は、田中 二郎(筑波大学 電子・情報工学系)および研究室の学生を中心に研究を遂行する。

本研究は、当初より平成7年度と8年度の2年計画で行なうことが、計画されており、平成7年度には、本研究の基盤として、klicのTcl/Tkインターフェースklitcl (クリティカル)を開発し、同時に、アニメーション、undo機能など、ビジュアルプログラミングのための基礎的な技術に関して、部分プログラムを作成した。

これらの成果に基づき、平成8年度は、「klicの視覚的インターフェースに関する研究」として、klicのためのビジュアルプログラミングシステムを完成させる。

そもビジュアルプログラミングとは、複雑な事象を単純化・抽象化したシンボルで表わすなどして視覚化し、これらを直接操作することによってプログラミングを行なうことであり、近年急速に注目が集まっている技術である。本研究では、単にプログラムがグラフィクスを使うだけではなく、プログラミングやデバッグまでもビジュアルかつインタラクティブに行えるようなビジュアルプログラミングシステムを提供することを目的とする。

ビジュアルプログラミングシステムにおいては、従来のようなテキスト表示でなく、抽象化された視覚的表現によりプログラミングを行い、それをアニメーションさせることによって実行を表現する。これにより、テキストベースの言語に比べてプログラムの動作がわかりやすくなることが期待できる.

従来のビジュアルプログラミング研究においては、図形言語をテキストベースのプログラミング言語から完全に切り離した形式で提案することが多かったが、本システムでは、システムを 既存のテキストベースのklic処理系に寄生させて実現し、図形言語と既存言語との共存を計る。また、ビジュアルかつインタラクティブなインターフェースを目指し、特にアニメーション技法をプログラム実行の視覚化に使用する。

なお、平成7年度に開発した、klicのTcl/Tkインターフェースklitcl(クリティカル)に関しては、IFS利用者からの声を反映する形で、必要があれば、仕様の改良、拡大を随時計り、同時に関連研究者との交流を計り、使いやすいものとしていきたい。


[想定されるソフトウェア成果]

(1)作成されるソフトウェア名称

「klicのビジュアルプログラミングシステム」

(2)そのソフトウェアの機能/役割/特徴

機能
ワークステーションから直接に図形を入力することによってプログラミングを行なったり、プログラムを図形的に実行・デバッグすることが出来る。

役割
klicのフロントエンドとして利用可能。klicのシンタックスがわからないユーザでも図形を用いてプログラミング、実行、デバッグが可能。klicのシンタックスを理解しているユーザにとっても、より直観的でわかりやすい図形的表現となっている。

特徴
図形言語とklicを「併用」するアプローチを取っている。特にアニメーション技法をプログラム実行の視覚化に利用。

(3)ソフトウェアの構成/構造

klicのビジュアルプログラミングシステムは、ユーザがワークステーションから直接に図形を入力することによってプログラミングを行なうとともに、それを実行・デバッグするインタラクティブな環境を提供する。

従来のビジュアルプログラミング研究においては、図形言語をテキストベースのプログラミング言語から切り離した形式で提案することが多かったが、本システムでは図形言語を、既存のテキストベース言語klic処理系に寄生させて実現する。

ソフトウェアは、前項のklic のTcl/Tkインターフェースklitcl (クリティカル)を用いて実現するが、大きく分けて、

(a) 図形的にプログラムを入力する部分、

(a-1) 図形定義節エディタの部分
(a-2) テキスト入力を図形に変換する部分
(a-3) 図形入力から内部表現に変換する部分
(a-4) 自動レイアウト/アニメーション部分
(a-5) プログラムのload/save部分

(b) 入力されたプログラムを実行・デバッグする部分
(b-1) 図形実行エディタの部分
(b-2) 内部実行状態を図形に変換する部分
(b-3) 自動レイアウト/アニメーション部分
(b-4) プログラム実行の動的デバッグ部分

などからなる。

(4)参考とされたICOTフリーソフトウェアとの関連

ICOTフリーソフトウェアであるklicを用いる。
また作成するソフトウェアは、既存のklicにあらたな付加機能、付加価値を提供することになる。

(5)使用予定言語および動作環境/必要とされるソフトウェア・パッケージ/ポータビリティなど

  klicおよびTcl/Tkを使用する。(Tcl/Tkはフリーソフトウェアである。)
  OSはUnix 4.1.X。

(6)ソフトウェアの予想サイズ(新規作成分の行数)

  10Kステップ程度の予定。

(7)ソフトウェアの利用形態

本ソフトウェアは、ユーザがワークステーションから直接に図形を入力することによってプログラミングを行なうとともに、それを実行・デバッグするインタラクティブな環境を提供するものであり、「klicのフロントエンド」として使用できるように作成する。

従来より、並列論理型言語については、シンタックスレベルでのリーダビリティの弱さ(すなわち読みにくさ)が指摘されてきており、ビジュアルプログラミング環境を提供することができれば、この分野に関心をもつ人々の裾野を一段と広げることが可能となると考えられる。

また、本ビジュアルプログラミングシステムの用途、応用形態としては様々な可能性が考えられるが、例えば、幼児向けの教育用プログラミングツール、初心者・一般向けの計算機の視覚的操作環境 (ビジュアルシェル) などが考えられる。

(8)添付予定資料

ユーザマニュアル、使用手引、簡単な例題
等を用意する予定。


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