平成8年度 委託研究ソフトウェアの中間報告 |
研究テーマ: 動的に変化する状況における法的推論システムの研究開発 研究代表者: 東条 敏 (北陸先端科学技術大学院大学 助教授) (1) 研究進捗状況 状況の概念を持つシステムの概要を検討し, その仕様をまとめた. 状況とは単 なるモジュールと異なり, 動的な生成と状況間の和・積などの演算を可能にす るものであるとする. また各状況に含まれる項については, 項の持つ時間的性 質を event/state/property に分類して, それぞれの項別に単一化の仕様を検 討した. 最初は property と state を同一に考えてきたが, 単一化に対して 時間的分類による区別は影響を与えず, 性質的分類による影響が大であること がわかり, このように変更した. これにより, 当初より問題であった各項の解 釈における任意限定と存在限定の問題が一通り整理できた. 現在までには型階 層の導入はまだ行なっていない. (2) 現在までの主な成果 Prologで不完全かつ疑似的ながら実装を行なった. このシステムは, ある状況 にサポートされるある項を query s:t として与えると, 以下の手続きによっ て状況あるいは項に含まれる変数を束縛した結果を返す. このとき, 証明は以 下の順序で行なう. まず, t が s に存在するかどうか調べ, 次に導出によっ て証明しようと試み, それが失敗すればさらに, 時間関係によってs'とsがこ の順序で隣接するとき s':t を証明することを試みる. 否定の扱いはまだ実装 していない. (3) 今後の研究概要 現在単一化においては, 状況と項と独立に行なうため, 手続きが非常に繁雑で あり, この手続きの決め方が現実的な項の読み方・イメージを著しく阻害する 可能性も出てきた. したがって, 項から状況への変数の移動を考察し, 単一化 のしくみをどちらか一方 (ここでは状況) に負わせるしくみを検討中である. 当初よりの仕様であった型階層を導入したシステムの構築は今年度から来年度 にかけて行なう予定である. (4) 今年度目標成果ソフトウェアイメージ 本年度末までに, 状況の動的生成と状況間の関係を用いた推論方式を実現する. 状況間の関係としては時間関係を考え, 時間の経過による状況の変化を記述実 験する. 例題として, 殺人の意志の時間的持続性を考え, おなじ殺人を犯す場 合でも状況が変われば(例えば, 殺人を行なう人間がそれを行なわなければ危 険な状態を回避できない状況など) 結論が変わってくる例を本言語で導く.