平成8年度 委託研究ソフトウェアの中間報告 |
(1)研究テーマ
(2)研究代表者(氏名、所属、役職)
(1)研究進捗状況
本年度においては、状態変化が記述できる言語(これをアクション言語と呼ぶ) の処理系を MGTP 上に実現すること、および昨年度の研究成果であるアブダク ティブ論理プログラミング(ALP)処理系についても、さらなる高速化と最適 化のために改良を行うことを目的としている。
このうち、アクション言語処理系は、アクション言語をまず ALP の形に変換 し、1年目の成果である ALP 処理系上で実行させることで処理系を実現して いる。現在、アクション言語のシンタックスの拡張による機能の拡大を目指し て、意味論と変換方式を検討中である。
また ALP 処理系の高速化の方は、いくつかのバグの除去を行い、最適化方式 の再検討を行った。とくに、失敗による否定(NAF)の計算における探索木の 枝刈りについてより強力なものを開発中である。
(2)現在までの主な成果
アクション言語処理系のプロトタイプ版を ALP 処理系上で実現した。ここで は非単調な常識規則である慣性の法則(law of inertia)を NAF を使ったルー ルで表現し、ある状態におけるある性質の推定を因果則と慣性則の連鎖により 行う。表現形式は McCarthy and Hayes の状況計算(situation calculus)を 用い、アクションの列はリストにより表現している。期待した解を一応出せる レベルになっている。
ALP 処理系は昨年度に開発した第1版について、上記のアクション言語処理系 の高速化につながる改良について実験を行った。具体的には、変数を含む場合 に NAF に関する枝刈りルールを強化し、組み合わせの数を抑えるような改良 を施した。
(3)今後の研究概要
改良した ALP 処理系を用いて、アクション言語処理系の高速化を行う。また、 拡張したアクション言語に対する変換と計算メカニズムを確立する。さらに、 ALP 処理系においては、アクション言語への応用のみならず、グラフ理論の NP 完全問題に適用した時に、海外で提案された他方式に比べて良い結果が得 られるように、さらなる最適化を行う。今年になって選言を含むプログラムの ベンチマーク問題(グラフ探索)も整備されて来ているので、それに関しても 評価を行う。最後に、アクション言語処理系のマニュアルや説明書を整備する。
(4)今年度目標成果ソフトウェアイメージ
成果物のソフトウェアとして、「ALP-MGTP: アブダクティブ論理プログラムの 処理系 (改良版)」と、「Action-MGTP: アクション言語の処理系」がリリース 出来る見込みである。このうち、ALP-MGTP は昨年度成果物の改良版であり、 機能的には特に変わりはなく、性能の向上を図る。Action-MGTP では、アクショ ン言語で記述された知識ベースに対して、さまざまな仮想の状態変化に関する 質問応答を可能にするほか、プランニング問題も解ける。過去の計画プログラ ムとの違いは、フレーム問題を扱えること、論理プログラミングの枠内で計算 すること、すべての問題領域知識が宣言的に記述されることなどが挙げられる。