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技術の変遷は、川の流れに例えれば、川底のゆっくりした大きな流れと、川の表面の絶えず変化する流れがあります。今のコンピュータなりネットワーク技術の根幹となっている技術についてみると、川底の流れに当る基本技術は相変わらずノイマン型であったり、TCP/IPです。超並列コンピュータは最近やっと製品が市場に出ましたが、第五世代コンピュータの完成から数えても10数年かかっています。インターネットももっとかかっているわけで、川底の技術はロングレンジで営々と培っていかなければなりません。一方、川面の技術は、流行するファッションが毎年変わるように頻繁に変化します。企業は顧客の要望を先取りし、より競争力ある製品を市場に出して行くために、この川面の技術開発優先で取り組まねばなりません。 ソフトウェアは人間社会と接しており、川面近くの技術がとかく注目され、ショートレンジの技術開発が強調されます。しかし、プラットフォームとなる基本ソフトウェアやネットワークの透明性を実現するミドルウェア、人間との対話のインタフェースとなるAI応用ソフトウェアなどの技術は、川底の技術の蓄積に大きく依存します。川底の技術が変わるスピードは非常にゆっくりですが、いったん変わると、その影響力は川面まで及び極めて大きいものとなります。超並列マシンの技術などはその一例でしょう。 そこで、この川底の技術開発は誰が担当すべきかが問題となります。情報革命の先頭を切っていても、このような技術の重要性に米国はすでに気付いています。米国の21世紀情報技術開発計画では、現在の米国における情報産業の興隆は、10〜20年前の先行投資の成果にその源泉があり、現在の繁栄はそれを食い潰しており、最近の研究投資は3〜5年の短期投資に偏っていると言っています。そこで、短期投資は民間に任せて、国家投資は中・長期の川底の技術開発に向けようというのが21世紀の米国の国家戦略です。 鶴保●もともとソフトウェア産業には、お客様とともに成長する構造があります。先進的なお客様の注文を製品に反映することによって、情報サービス企業自体も成長していく。日本の場合は、先進的な情報システムの構築に関して、社会全体が二の足を踏んでいる傾向にあります。そのため、情報サービス企業が受注産業化し、先進的なお客様との連携がうまくとれてこれませんでした。これからのソフトウェア産業の発展が国民全体の生活にかかわる問題だとしたら、国そのものが「先進的なお客様」になる必要があると思います。
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