社長対談SO-
「日本における情報産業の構造的課題」
 
内田■根本的な原因として、国のキャッチアップ型技術開発の時代に形成された仕組みや大企業依存体質がまだ根強く残っていること、国の会計制度や公務員制度も制度疲労が蓄積し、情報革命をフォローする迅速な技術開発や産業育成の実施を阻害していることなどが挙げられます。

例えば、新産業を創造するためには中小企業、ベンチャー企業の台頭が必須である、という教訓が国の技術開発や産業支援の仕組みや制度に反映されていません。米国では、新技術を応用した製品やサービスを提供するベンチャー企業や中小企業の支援策として市場における優遇策をとっています。これは、組織力のないベンチャーや中小企業を大企業とそのまま市場で戦わせるのはフェアでないという考え方や、すべての大企業もかつてはベンチャー企業だったという歴史的教訓が生かされています。起業家や中小企業などの新技術開発を支援するための資金援助も、大学などがストックした資金による支援、国からの公的資金、民間のベンチャーキャピタルによる支援など多様で、かつリスクマネーとして「投資」する仕組みとなっています。このため起業家は倒産した場合でも自分の出資分を失うのみで済むようになっています。

一方、日本では国の支援は「融資」や「補助金」が原則で担保が求められたり、自己負担分が生じる仕組みとなっていて、ベンチャー企業が育ちにくい土壌になっています。起業家、ベンチャー、中小企業の支援は、産業全体の人の流動化メカニズムを確立させ、産業の新陳代謝を促進し、新しい時代へ対応するための仕組みづくりをサポートするものです。現在検討されている中小企業支援策は、既存の企業の救済的側面が強く、新技術を持ち新市場を開拓するという面が不明確です。 情報技術、特にソフトウェア技術は頭脳労働が主体であり、個人の才能が重要です。これまでの日本企業の標準的な経営の柱であったチームワークの重視や年功序列的人事の仕組みは、ユニークなアイデアの創造や起業家精神を奨励するなど、個人の能力をより重視する経営方針へ転換してゆかねばならないでしょう。

また、日本の主要産業が情報武装を迅速に進めるとなると、ソフトウェア産業は海外に人材を求めざるを得ない状況です。グローバルな市場進出のためにも海外の人材確保は不可欠です。そのような面からも従来の日本型の経営方針をグローバルスタンダードに合わせたものへと転換を図ることも急務です。国も技術開発プロジェクトの実施等において国際的実施体制を敷くなどの転換を図るべきだと思います。

鶴保●最近でこそ、日本でも情報技術系ベンチャー企業が次々と立ち上がり、上場した企業、もしくはこれから上場しようとしている企業がたくさんあります。しかしながら、他にはない独自の情報技術をコアコンピタンスとしたベンチャーはまだまだ少ないと思います。 当社は情報技術とネットワーク技術を融合した革新的ネットワーキングテクノロジをコアコンピタンスとして事業を発展させてきました。技術革新とマーケットニーズが目まぐるしく変わる情報産業で生き残っていくためには、自社だけでなく優れた新技術やサービスを提供する企業や大学をはじめとした研究機関とアライアンスを組みながら、ともに成長していくことが欠かせません。 21世紀には、情報サービス産業が最大の産業分野なると言われています。私どもその産業に身を置く企業として、日本の先端情報技術開発の発展に少しでも寄与するために、産官学を問わず積極的なバックアップをしていくとともに、グローバル化の流れに沿った事業展開を行っていきたいと考えています。

本日はどうもありがとうございました。
 

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