実装したシステムをもとに、法的推論における緊急避難・過剰避難の例 を解く問題を設定し、状況によって異なる推論を導くようすを示した。これは 飲酒時に暴漢に襲われ、飲酒運転で逃げた場合にどのような法的判断が下され るかを解くものである。この事件の時間関係は図 --1のように示される。
この時間関係は図 --2のように制約解消系で解くことが できる。
残された課題
自己評価
本研究においては、当初、状況変数の導入とそれの動的な束縛、およびイベン トとステートの区別を考えた状況推論システムを目標とした。さらに、状況変 数の導入においては、状況の変化に伴い動的にソート階層も変化するシステム を構想した。しかしながら、研究の進展につれて状況の隣接関係や順序関係と 言った基礎的側面に関心が払われ、この部分を集合論的に固めることが大きな研 究の柱となり、ソートの動的変更という課題は来年度以降に持ち越しとなった。 われわれ自身の評価としては、ソート階層の導入を遅らせたことは決してマイ ナスではなく、推論システムの宣言的意味論・操作的意味論を健全にするため にむしろ有意義な基盤固めができたと考えている。なお、イベントとステート の区別については、さらにこれにプロパティとの区別も加えるという発展的な 形で導入を行うことができた。これらが充分に機能を発揮するのはソート階層 がある世界でのユニフィケーションである。したがって、この部分はその成果 を来年度再度問う必要がある。