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「高度問題解決のための推論プログ
ラムの開発」に関する成果概要 Previous: 研究の内容
本研究において作成したアクション言語処理系は、更新操作などにより動的に
変化する知識ベースや、アクションの実行によって状態が変化する問題領域を
扱うための宣言的言語の処理系である。また、フレーム問題を意識せずに状態
変化が扱えること、論理プログラミングの枠内で計算を行うこと、すべての問
題領域知識が宣言的に記述されるために知識の見通しが非常によいこと、など
が特徴である。
以下に、提案するアクション言語 AD と開発したアクション言語処
理系についてまとめる。
- アクション言語 AD について
- 非決定性アクションの効果( 効果命題)、動的な制約(
評価命題)、静的な制約( 充足命題)、アクションの実行可能性
( 実行可能性命題)が表現可能である。
- 各命題にフルーエント式が記述できる。
- 領域記述に変数を含むことができる。
- 論理プログラムの中で最も広いクラスの一つである拡張選言的プログ
ラム(extended disjunctive program)に変換可能である。
- アクション言語処理系について
- これまで理論上で展開されていたアクション言語を実際に推論できる
処理系である。
- いくつかの制限はあるものの、領域記述が変数を含む場合にも正しい
推論を行うことができる。
- NAFによる負節の導入により計算の効率化がなされている。
- ユーザと処理系とのインターフェースプログラムにより、プランニン
グ、問合せ、解代入などができる。
関連外部発表論文リスト
1, 2はALP処理系関連、3は本研究の中間段階での発表、4, 6, 7はMGTP関連、5
はアクション言語に関する理論研究の発表。
- Katsumi Inoue and Chiaki Sakama. A Fixpoint Characterization of
Abductive Logic Programs. Journal of Logic Programming,
27(2):107--136, 1996.
- 井上 克已,壷内 敬吾,山本 友和. アブダクティブ論理プログラムのボ
トムアップ処理系.In: 人工知能学会全国大会(第10回)論文集,pages
(139)-(142), 1996.
- 山本 友和,井上 克已.状態変化領域の表現と推論の実現について.In:
人工知能学会全国大会(第10回)論文集,pages (143)-(146), 1996.
- 荒山 正志,井上 克已. 非ホーン節を含む演繹データベースの問合せ処
理の効率化.情報処理学会論文誌, 37(12):2295-2304, 1996.
- 鍋島 英知,井上 克已.アクション言語 A のためのオートマト
ン理論.情報処理学会論文誌, 38(3), 印刷中, 1997.
- 長谷川 隆三,井上 克已,太田 好彦,越村 三幸.上昇型定理証明の探
索効率を高めるノンホーン・マジックセット.情報処理学会論文誌, 38(3),
印刷中, 1997.
- Ryuzo Hasegawa, Katsumi Inoue, Yoshihiko Ohta, and Miyuki
Koshimura. Non-Horn Magic Sets to Incorporate Top-down Inference into
Bottom-up Theorem Proving. In: Proceeings of the Fourteenth
International Conference on Automated Deduction (CADE-14),
Lecture Notes in Artificial Intelligence, to appear, Springer, 1997.
ソフトウェアとしての成果
ソフトウェア構成の概要
図-1: アクション言語処理
系の構成
アクション言語処理系は、図-1のよう
に、
- アクション言語 AD で記述された領域記述からALP処理系入力節
への変換器、
- ALP処理系、
- アクション言語処理系独自のゴール問合せや解代入、遷移状況の出力など
を実現するためのALP処理系とのインターフェースプログラム、
から構成されている。
ソフトウェアサイズ・ドキュメントの種類
- ソフトウェアサイズ:
-
ソフトウェア |
サイズ |
アクション言語処理プログラム |
112KB |
ALP処理系プログラム改訂版 |
109KB |
合計 |
222KB |
- ドキュメントの種類:
-
「高度問題解決のための推論プログラムの開発−アクション言語処理系の開発
−」 (316 KB): アクション言語の説明と処理系の機能を含む解説書に付録と
してユーザーズマニュアルを添付したもの。
ソフトウェアの特長
アクション言語処理系は以下のような機能を持っている。
- ALP処理系の機能
- 解集合を1つ返す;
- 解集合をすべて返す;
- MGTPが出力するモデル候補を1つ返す;
- MGTPが出力するモデル候補をすべて返す;
など
- 状況 S においてフルーエント F が成立していることを
意味するholds(F,S) という問合せが可能(解代入可能)
- F を変数とすると S において成立するすべてのフルー
エントを返す
- S を変数とすると F を実現するためのアクション列を
返す( プランニング機能)
- 状況 S においてフルーエント F が成立していないこと
を意味する
holds(F,S)
という問合せが可能(解代入可能)
- あるアクション列を入力として与えると、初期状態からそのアクション
列を実行した後の状態までの遷移状況を返す
- 領域のアクションをすべて返す; 領域のフルーエントをすべて返す; 領
域で生成される状況(考慮する状況)をすべて返す; 領域で到達可能な状況を
すべて返す、などのユーティリティ機能
残された課題
今後の課題としては、以下の点が挙げられる。
- アクション言語をさらに拡張する。例えば、領域記述に条件式を記述可
能にしたり、同時に発生するアクションを扱えるようにする。
- アクション言語処理系を拡張する。例えば、領域記述において変数を自
由に扱えるような拡張、形式の制限がないフルーエント式の扱いなどがある。
- 効率化の問題。これには、
- ADから論理プログラムへの変換の効率化、
- ALP処理系の効率化、
- MGTPの効率化、
- 直接的に推論エンジンを実装することによる効率化、
などが考えられる。
また、状態変化領域をアクション言語で表現する場合に、複雑な領域をどのよ
うに記述するのが最善であるかという問題もあり、今後の研究課題である。
成果についての自己評価
今年度の研究目標であった「アクション言語処理系」が実現され、豊富な機能
を有し、正しく動作するものが出来た。また昨年度開発したALP処理系も改良
を重ね、アクション言語処理系に用いることで、解ける状態変化領域のサイズ
を大幅に増やすことができた。ただし開発時間の関係で、改良版のALP処理系
をアクション言語以外の問題で評価することが十分できず、昨年度の課題だっ
たALP処理系の改良については今後も引続き検討していかなければならない。
またALP処理系・アクション言語処理系とも、KLIC版の整備を今後行いたい。
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