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![]() 内田■当時、メーカはIBMのメインフレーム技術に追いついたという認識を持ち、当分はこの技術でビジネスを展開するつもりでいました。第五世代コンピュータプロジェクトは、日本にもオリジナルな技術開発ができることを示すのが第一の目標と捉えられていたように思います。それとやはり舶来尊重というか日本発の技術を育てようとする意欲が国、メーカ共に乏しかったように思います。 一方米国では、超並列マシンに関してエネルギー省が進めている先端スーパーコンピュータ計画(ASCI)にその成果がよく反映されていると思います。第五世代コンピュータプロジェクトでは、1000台程度のプロセッサしか結合できませんでしたが、彼らは巨大な体育館のような建物を作り、9000台のプロセッサを結合したマシンをすでに完成させ、さらに拡張したマシンをいくつも開発中です。そのハードウェア開発はインテルやIBMがすでに半ば商用化を視野に入れて実施していますが、試作されたハードウェアをインフラとして利用し、アプリケーションも同時に開発中です。軍事目的のほか、遺伝子の解読とか、環境のシミュレーション、知的CADや機械翻訳などAIの問題解決を目指しています。 鶴保●米国では第五世代コンピュータの研究成果が先に実用化、商用化されつつあるというわけですね。遺伝子情報処理に関する産官学を挙げての国家的取り組みを見ても、日本でも最近になって力をいれてきていますが、やはり日米の差は歴然としていると言わざるをえません。 内田■残念ながらそうですね。第五世代コンピュータの応用としては、遺伝子情報処理のほか、並列CAD、法的推論、定理証明などをやりました。遺伝子情報処理に関しては、当初米国のアルゴンヌ国立研究所の研究者と共同研究を行いデータベースをもらったり、一緒にソフトウェア開発を行いました。その後、日本の生物学者とも共同研究を開始し、国内にも異分野である生物学と情報技術の出会いの場を作りました。遺伝子情報処理に関しては、その後日本でも重要性が認識されましたが、予算については日米では二ケタ以上の差がありました。1990年、人間の遺伝情報をすべて読み取ることを目指したヒトゲノム計画が米国でスタートした時についた年間予算は約200億円。しかもそのうちの半分は情報技術開発に向けられました。 最近ではご存知のように、この分野が医薬品業界や農産物の種子や肥料業界にとって宝の山であることがわかり、人間のみならず穀物や昆虫などの遺伝子情報が解読され特許登録されて、米国の企業がそれを隅々まで押さえにかかっています。日本は今それを一生懸命追いかけていますが、どうしても差は開くばかりのように思えます。
第五世代コンピュータプロジェクトは、日本発のコンピュータ・サイエンスを確立し、世界のアカデミアからは高く評価されました。おかげさまで、プロジェクトに関わった研究者たち、約100名はその後、それぞれ大学へ移り日本の情報処理の教育現場を支えています。メーカに戻った人は日本の超並列マシンや先端ソフトウェア開発の中核となっています。しかし、研究成果をさらに発展させたり、産業界へ技術移転する点に関しては、残念ながら米国に先を越されてしまいました。 |
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