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資料-2「ペタフロップスマシン技術に関する調査研究」

本調査は、電子技術総合研究所計算機方式研究室 山口室長を主査とし、 先端コンピュ−タ技術のアーキテクチャから応用ソフトウェアの専門家まで、 幅広い分野の研究者を集めたワーキンググループ(WG)を構成し、実施した。

米国では、従来のテラフロップスマシンのハードウェアやソフトウェアの 研究開発に続くものとして、さらに未来を指向したペタフロップスマシンの 研究開発を政府支援プロジェクトの一つとして開始している。 本WGは、WGメンバーである専門家による検討、WWWを用いた米国関連機関の 公開情報の収集・分析、海外調査、外部専門家のヒヤリングによった。

海外調査は1996年の10月から11月にかけて並列分散処理シンポジウム(SPDP'96、 米国ニューオリンズ)、超並列コンピューティング・フロンティアシンポジウム (Frontiers'96、 米国アナポリス)に出席し、米国における研究の最新情報を 入手した。

米国では、ペタフロップマシン技術の研究開発は、ペタフロップス・イニシアティブ と呼ばれるコミュニティ活動を中心に実施しており、これをNASAを中心とした 複数省庁が支援し推進している。この活動は、HPCCプログラムに付随して、 1991年より活動を開始し、当初、非公開であったが、1994年の公開シンポジウムを 機に、現在では、WWWや関連の公開シンポジウムを通じて、オープンな活動となって いる。

米国での高性能コンピューティング技術の研究開発は、HPCCプログラムを中心に進 められており、現在、1-2年の内に1-3テラフロップス(Tflops)の達成をめざした ASCI (Accelerated Strategic Computing Initiative) 計画が実施されている。 この計画では2005年までに100Tflopsを実現しようとしている。 ペタフロップス・イニシアティブで目標は、2010年までに、1ペタフロップス (Pflops)のマシンの開発することであり、ASCI計画の次の計画として位置づけ られている。

一方、日本では、特定の応用を想定したTflopsレベルのマシンを目指す計画が いくつか個別に検討されている。「宇宙・素粒子分野のCP-PACS」(筑波大)、 「気象・地震分野の地球シミュレータ」(高度情報科学技術研究機構)、 「物理・化学分野のバーチャルマイクロスコープ」(電総研等)、 「特殊なアーキテクチャを用いて2000年にPflopsを狙うGRAPE」(東大教養)などが ある。これらは、それぞれ個別に研究が進行しており、総合的な連携は とられておらず、汎用を目指したペタフロップスマシン開発にはつながっていない。

米国では、ASCI計画を代表とする10Tflops、100Tflopsを目指した計画が具体化 されており、そこでのアーキテクチャは従来の主流を占めているベクター型では なく、汎用チップを並べたスケーラブルな超並列型である。また、そのソフト ウェアはプラットフォームが変わることにより、汎用並列ソフトウェアの実現が 可能となることから、数値処理から知識処理までをカバーする将来の汎用マシンを 目指している。

このように、米国は次世代の小規模から大規模までの高速マシンのハードウェア、 ソフトウェアの中核技術を確立し、世界市場をリードすることを狙っている。