next up previous
Next: 資料-2「ペタフロップスマシン技術に関する調査研究」 Up: 目次 Previous: 調査資料-3「日本における情報技術関連研究開発プロジェクト」

調査資料-4「情報関連産業への国の投資による経済効果予測」

本調査は、情報産業(特にソフトウェア産業)への投資効率を検証する ために、情報産業自身への研究開発投資効果と他産業への投資効果とを比較し、 その内容を分析したものである。

シミュレーションは、情報産業における研究開発投資を分離した統計情報が とられていないことから、情報サービス産業を対象とし、そこにおける 研究開発投資の割合を推定することで分析を行なった。 その上で、一定のR&D投資を情報サービス産業に行った場合と他の 産業に行った場合の各産業の生産額の増加を算定する方法を取った。その算定に おいては、R&D投資は技術資産として蓄積され、生産性向上をもたらすという メカニズムが成立し、かつ産業連関表を用いた価格分析が行えると仮定した。

また、R&D投資は、民間投資と国家投資があるが、民間投資は自然増とし、 国家投資額を外部から定めるパラメータとした。両投資を合わせたR&D投資の 蓄積が投資先産業の生産性を向上させ、これが、製品価格を低下させる。 価格低下により製品の需要は活性化され、それにつれて生産額が増加する。 一方、これら製品は他産業に対し原材料となるため、他産業製品の価格低下に 寄与し、その生産額増大をうながす。

 以上のメカニズムを定式化し、国のR&D投資を、約1.5兆円(内閣の 「情報通信の高度化に資する施策」予算の全額)とする場合、および約166億円 (科学技術関係経費実数)とする場合を分析した。 これらの投資を単一の産業に1995年から2000年まで毎年投資した時の2000年時点で の各産業の生産額を見積もった。

その結果、R&D投資が大きければ情報サービス産業の成長は他産業に比べ3倍以上、 全産業を活性化させる割合も4倍以上となることがわかった。R&D投資が小さい 場合でも、情報サービス産業の伸びは他産業の5倍程度あり、 大きな効果があることがわかった。農業への投資効果は、R&D投資が小さい 場合は大きいが、これは投資額が増加するとすぐに飽和する。

 これから、情報サービス産業へのR&D投資は、他産業への投資に比べ自産業、 および全産業の生産拡大に大きな効果を持つことが示された。この効果は、 「R&D投資が短時間で製品になり、技術の陳腐化も早い」、 「投資による生産性向上率が高い(経験則)」、 「生産性向上による価格低下効果が抜群に大きい(経験則)」、 「これまでの投資が小さいために投資効果が大きい」という情報産業の持つ 性質からもたらされると考えられる。