本調査は、日本電信電話(株)基礎研究所 奥乃主幹研究員を主査とし、 最近話題となっているネットワーク関連技術、AI関連技術、それらを土台と する応用ソフトウェア技術などの専門家を集めたワーキンググループ(WG)を 構成し、実施した。
近年、情報分野においては、大規模な技術変革が次々と起こり、従来、コンピュ− タと縁の無かった人々が新しい利用者層を形成し、これにともないインターネット などを通じたコンピュ−タの利用方法や新しいヒューマンインタフェースなどが 求められ、これらを実現する新技術が話題となっている。
このように、情報技術を取り巻く状況は大きく変わってきており、従来の情報 処理の理論や技術ではカバーしきれない技術分野も生じてきている。 それは新たな情報処理のパラダイムが登場する前段階と考えられる。
本技術調査WGでは、このような観点から、インターネットに代表されるネットワ ーク関連の新技術、およびAI技術を中心に、将来の情報技術はどのような姿に なっていくかという問題意識を持って、各委員が各自の専門分野の将来に 関して日頃感じていること、考えていること題材に議論を行なった。
取り上げたテーマは、以下のようなものである。
携帯型や組込み型を含むさまざまなコンピュータがインターネットのような グローバルなネットワークで接続された世界では、それが通信を行なう場として だけではなく、それらのコンピュータが保持しているデータ群を巨大なデータ ベースとして捉えることができる。 このWGで取り上げたテーマは、現実世界との 関わりのなかでネットワークから情報をうまく取り出したり、その情報を 利用してコミュニケーションを効率化するための新技術の実現手段として、 上記技術の相互関係を検討することである。
これらの新技術に共通な性格は、種々の社会システムを知的に支援するソフトウェアを 構築するための重要な要素技術となり得ることである。 本調査では、このような先端情報技術への取り組みの日米比較も行なった。 米国では、HPCC計画の後継プロジェクトである Computing, Information, and Communications (CIC)R&D 計画の中で、このようなテーマが大規模に取り上げられて いる。この計画では、 医療、教育、環境などさまざまな社会システムの分野に適用できる効率的で 使い易い情報環境の構築を目標とし、基礎研究から開発まで幅広く行なっている。
それに対して、日本は、方法論指向で小規模の基礎的研究が中心となっている。 その一方で、アプリケーションの開発も行なわれているが、個別のアプリケーションに 特化した形で行なわれることが多く、基礎研究との連携が考慮されず、個々の 技術が他のアプリケーションに転用できるように考えられることが少ないのが 現状である。
いずれにせよ、新技術はその必要性が認識される故に開発されるというよりは、 米国の後追いを動機として、研究開発される傾向が、依然として見られる。 今後は、情報を広く利用するという視点に立っての、フロントランナー的指向に 基づく研究開発が望まれるところである。