通称Blue Bookと呼ばれている「IT研究開発 (NITRD) に関する大統領予算教書補足資料」は、毎年発行され、NITRD計画の活動状況の概要をまとめている。このBlue Bookの内容を調査することにより、現在の米国政府のIT研究開発がどのような技術分野に着目し、どのような方向に進んでいるかを知ることができる。
2002年8月に公開されたFY2003 (2003年度版) Blue Book:”Strengthening National, Homeland, and Economic Security”は、同時多発テロ以降の米国の立場を色濃く反映したものになっている。ここでは、政府支援によるIT研究開発の最重要目的は「米国の国家、国土および経済の安全保障の強化」のためであり、巻頭の10ページにわたって、NITRD計画により開発された先進技術が国家、国民および経済の安全の確保にいかに貢献しているかが強調されている。ただし、内容を読む限り、その研究内容は従来からそれほど変化があったようには見えない。同時多発テロ以降、軍事、安全保障のための予算が増加しているが、従来からのIT研究開発に対する影響は少ないようである。
NITRD計画の推進体制に関しても、2002年度から大きな変更はない(図2.1参照)。参加省庁に関して若干の変更があるが、本質的な変更ではなく、他にLSN Coordinating Group内のチームが再編成され、Middleware and Grid Infrastructure Coordination(MAGIC)が追加されたのが目につく程度である。
図 2.1 NITRD推進体制