第1章 国が支援する情報技術研究開発のあり方
当研究所のマンパワーは、所長、事務管理者3名、経理担当者1名、研究員6名の体制であった。所内の研究員のみでは、上記の調査範囲をカバーするのは困難であった。このため、メーカやソフトウェアハウス、大学、国研などの研究者の協力を仰ぎ、次のような委員会やWGを設けた。集まってくれた研究者の持つ知識や彼らの議論により調査データの収集、分析を行った。
1)技術政策委員会
委員長:故水野幸雄氏(NEC顧問)、メンバー:メーカ6社の技術担当役員、
またはそれに準ずる技術企画担当者、通産省担当者等
委員会の目的:
−各年度の研究所調査テーマ、計画などの審議、
−前年度の調査結果のヒヤリングや提言についての審議
−国のIT政策などの紹介、質疑応答2)研究開発体制のあり方検討作業委員会
委員長:後藤滋樹氏(早大教授)、メンバー:メーカ+ソフトウェアハウスの研究所長、
IT関連事業部の企画担当者
委員会の目的:
−ナショプロの実施体制、予算や成果の管理体制などについての問題点や改善すべき点などの議論
−プロジェクトの実行体制や予算制度の日米比較の議論
−わが国のIT研究開発政策や投資についての問題点の議論
−わが国の国研や大学の体制や連携に関する問題点の議論3)先端IT技術分野の動向調査WG
a)High-End Computing and Communication WG (HECC-WG)
委員長:山口喜教氏(筑波大教授)、メンバー:大学の若手教授、電総研の中堅研究員、
メーカ研究所の課長クラスなど、第一線の研究に従事している者
b)Human Centered Intelligent Systems WG (HCIS-WG)
委員長:奥乃 博氏(京大教授)、メンバーは上記WGと同様
これらWGの目的:
−各委員の専門分野周辺における内外の技術動向調査
−国のプロジェクトとすべき研究開発テーマや開発目標の議論
このほか、米国の研究開発の仕組み、法制度に関して、米国の調査会社やNSFなどを退職したプログラムマネージャなどに調査を依頼し、研究の実施方法や研究予算、成果の管理方法などを詳細に調査した。
このような3つの階層から成る委員会/WGを構成し、日米比較に基づく議論をもとにわが国の研究開発の仕組み、法制度の問題点や改革提言を明確化し、各年度の報告書を作成した。
特に、米国の連邦政府支援の研究開発計画(R&D Initiative)の仕組み、法制度は、わが国のそれと比較し、はるかに進歩しており、わが国のメーカ、国研、大学の研究者は、米国の研究者に比べ、研究管理や予算の使途に関し制約が多く、事務処理負担も重い不利な環境におかれていることが明らかとなった。