3. 欧州
欧州の中でも、北欧諸国はITの活用が活発である。スウェーデンでは、“一番速く全国民の情報社会を実現する”ことを目標に、IT政策を展開してきた。以下は、新IT政策の概要である。
a) IT政策の経緯
1994年IT委員会を発足し、同年委員会は教育、法律、公的部門管理、医療・保健、通信、産業・商業、IT等主要7分野の先進情報国へ向けたビジョンを公表した。その後、スウェーデン社会の情報化を促進し続けてきた。1995年新しいIT委員会が設立され、政府に対してのIT戦略の助言、IT知識の普及、将来のトレンドの調査などが任務に追加された。1998年、政府は全国的に高速処理能力を持つITインフラの研究を行い、2000年3月、国会にIT法案を提出した。これらはすべてIT政策の土台となっている。
公的部門におけるIT
スウェーデン政府は公的機関がIT利用の模範となることを決定した。公的部門管理局(SAPM---Swedish Agency for Public Management)は、政府・公的機関におけるIT利用を監督し、情報管理を効率的で、安全かつアクセスしやすいシステムに発展させている。
国民への情報提供
スウェーデンにおけるインターネットの利用は公的部門、一般市民、企業間のコミュニケーションの基礎となっている。国の公的機関の90%近くは各自のウェブサイトを持ち、電子メールで通信している。公的なデータベースは無料で提供され、利用は増加している。モVirtual
Swedenモは公的部門へのインターネットアクセスの窓口であり、その目的はすべての公的機関がひとつの接続口を通じて、人々へより良いサービスを提供することである。
公的部門の24時間
SAPMは2000年の初め頃、24時間のオンラインサービスの提供を決定した。公的部門のIT管理に関する政策、実践と経験などが集約されており、国民に無料で公表している。
b) 新IT政策
急速なIT技術の発展や国際競争の激化に立ち遅れないように、スウェーデンは1996年から新IT政策の作成に着手した。新政策においては、ITに対する信頼性とIT利用のセキュリティが重要な課題であり、新たな法律や対策が要求される。
ITは社会の色々な分野に関わり、産業・社会の情報化、福祉の向上、民主化の強化をもたらす。ITへの投資は設備などのハードウェア以外に、ITに関するさまざまな利用者や人材にも投資すべきである。個人のIT利用能力やノウハウは学校の教育、職場の教育訓練とITの利用を通じて強化する。スウェーデンが情報化先進国の地位を保つため、より多くのIT専門家を養成し、獲得することが要求される。ノウハウを得た人々が気楽に、信頼できかつ高速処理能力を持つシステムに経済的にアクセスすることができれば、スウェーデンは高度な情報社会となる。IT政策は基本的に技術的な政策よりも民主主義の政策であり、国民の一人一人がITから恩恵を受けることを重要視している。
c) IT政策の目的とアプローチ
IT政策の目的
スウェーデン議会は全国民のための情報社会の実現をIT政策の目的として設定した。全国民的情報社会とは誰でもITにアクセスでき、信用し、利用し、その恩恵を受けることができることである。国はこの目的を実現するための環境整備や障壁撤去と犯罪などマイナスな面の予防に努力していく。
IT政策のアプローチ
世界で一番速く全国民の情報社会を実現するためには、IT政策以外の政策との連携が要求される。以下はスウェーデン政府が出した全体的なアプローチである。
d) IT政策を促進していく領域
スウェーデンは、具体的に以下の領域においてIT政策を実施しようとしている。
IT部門の成長を促進する対策
就業を促進する対策
ITの急速な発展に付いて行けない人に対応する各レベルのIT教育訓練を通して就業機会を拡大する。
地域発展を促進する対策
ITの利用は地域と距離に関係なく、どこでも、いつでも行われ、地域の格差を縮小する。全国的な高性能インフラの構築は地域の発展に繋がる。
民主と公正を促進する対策
QOL(生活品質)を向上させる対策
男女平等と文化の多様化を促進する対策
公共部門管理の効率性を促進する対策
環境にやさしい社会を促進する対策
スウェーデンのIT部門の優先事項
情報社会の構築に向けて、IT政策の当面の焦点を、法制度、教育訓練、情報通信インフラに充てる。特に、次の3つのことに重点をおく。
1) | Confidence (全ての人々がIT利用において、セキュリティが確保されること) |
2) | Competence (全国民へのIT基礎スキルを身につける対策) |
3) | Accessibility (ITを利用して情報を容易に入手し、利用し、コミュニケーションすること) |