【前へ】

3. 欧州

3.3 フランス

 フランス政府は、1994年にフランス・テレコムの元総裁ジュラルド・テリー氏にIT政策に関する検討を依頼し、「フランスにおける情報ハイウェイ・サービス」レポートが提出された。このレポートでは、光ファイバの建設と大規模な投資とサービスに関して国のコミットメントを求めた。これを受け、情報ハイウェイに関する635の実験プロジェクトが検討され、このうち244件が採用された。244件のテーマは多岐にわたっており、インフラストラクチャ(プラットフォーム)の開発、遠隔教育、テレサービス、EDIアプリケーション、オーディオビジュアル、医療等を含んでいる。
 しかし、フランスにおける情報化の進展は他の欧州先進諸国に比べ遅れていた。IT政策が積極的に展開され始めたのはジョスパン首相になった97年以降である。97年8月には、スピーチの中で、IT国家戦略に関して「野心的なアクションプラン」を提唱し、98年1月に、「情報社会のための政府アクションプログラム(PAGSI)」を発表した。アクションプログラムには、政府の役割として、触媒としての役割(企業や国民に情報社会の重要性を伝える)、規制機関としての役割(情報社会におけるルールを確立し、実施する)、主要なプレーヤーとしての役割(公共サービスと国民の間の関係を一新し、サービス提供のやり方を最新のものにする)の3つが掲げられている。また、アクションプログラムの優先分野としては、教育の情報化、文化資産の情報化、行政の情報化、企業情報化と電子商取引、技術革新と研究開発の促進、法制度の整備の6つが設定された。そして、これを具体化した「省庁別アクションプログラム(PAMSI)」が作成された。
 これらの進捗を評価し、各活動の調整を図る組織として情報社会省庁間委員会が組織化された。首相が議長を務め、関係大臣から成るこの委員会がフランスにおけるIT政策の最上位の統括機関になっている。
 2000年7月に開催された第3回省庁間委員会においては、これまで3年間に7億6,000万ユーロを投じたPAGSIの評価が行われた。教育分野に関しては、高校100%、中学校65%というインターネット接続率を達成しており、これは欧州の中でもトップレベルにある。行政の情報化では、政府・行政サービス機関の情報機器普及率が向上し、インターネット対応も進んでいる。政府内のイントラネット(ADER)も開始された。
 これらの評価を受けて、2000年以降のPAGSIの重点施策も発表された。特に、ディジタルデバイドの解消が大きなテーマとして掲げられており、今後3年間に4億6,000万ユーロを投じる。インターネットアクセスのための環境整備(公的スペースでのアクセス設備)、マルチメディア・トレーナーの雇用、全生徒向け「インターネット&マルチメディア免状」制度の導入、失業者に対するトレーニングの実施等が計画されている。また、研究開発分野にも3年間で1億5,300万ユーロの予算を充てている。インターネット研究所の設置、国立情報処理・自動化研究所の研究者の増強、国立科学研究センター内のIT部門の設置、大学のITプログラムの強化とインターネット研究者の育成、研究/教育用ネットワークの高速化等が計画されている。
 IT研究の重点分野としては、セキュリティ、ソフトウェアとテクノロジー、知的環境、知的輸送、住宅オートメーション、身体障害者のためのテクノロジー、フリーソフトウェア、オンライン教育/教材、医療のオンライン化、マルチメディアが取り上げられている。

【次へ】