仮説推論は、与えられた観測を説明するために、一時的に成り立つ知識をとり あえず正しいと仮定したり、足りない知識を仮説で補うなど、柔軟で知的な推 論処理である。[1]仮説推論では一般に、観測を説明する仮説集合は複 数存在する。しかしながら、診断・計画問題等において見られるように、 ユーザが要求する解はすべての説明ではなく、むしろ最も好ましい説明である ことが多い。このような要求に対しては、仮説に好ましさの基準(確率、コス ト等)を与える手法が報告されている(例えば文献[2]、文献 [3])。
本研究では、仮説の選択の基準として知識ベースに含まれる各仮説に重み(コ スト)が与えられている場合を対象に、与えられた観測に対して最適な説明を 求める仮説推論を考える。各仮説に与えられる重みは正の数とし、仮説集合の コストは集合に含まれる仮説の重みの和で与えられるものとする。説明が最適 であるとは説明を表す仮説集合のコストが最小であることとする。
本研究では、仮説推論の探索空間(ゴール節をノードとする探索木)を複数のプ ロセッサへ分散し推論処理を並列化することにより、仮説推論の高速化を実現 する。仮説推論の推論処理技術に並列ヒューリスティック探索が持つ探索制御 技術を導入し、与えられた観測を説明する最小コストの仮説集合を効率的に求 めることにより最適な説明を得る並列仮説推論を提案する。