本研究では、最尤法を用いた分子進化系統樹作成プログラムを作成し、並列環 境でその効率を調べた。基本的なアルゴリズムは、系統樹のすべての枝を横断 的に変化させることにより、最尤値を与えるような枝長の組み合わせを探索す るFelsenstein [1]のものである。このアルゴリズムで アミノ酸データを扱うためには、積極的な高速化が必要である。そのための手 法についても研究を行なった。実験においては、人工的なデータと、遺伝情報 データベースから採取した実際の生物のデータの両方を用いた。現実の生物デー タは、分子モーターの一種であるミオシン分子の軽鎖等を用いた。進化的変異 が比較的大きいもの同士の比較では、進化的に保存された領域のみを解析対象 とした。さらに、実際のデータ解析に必要な様々なプログラムをKL1で書いた。 現在、我々の生物学的な研究のいくつかは、このプログラムを用いて行ってい る。
並列環境への実装については、当初ICOTのParallel Inference Machine (PIM/m(64PE))を用いていたが、我々の研究機関からPIMへのアクセスが困難で あったこともあり、プラットフォームをSunワークステーションでParallel Virtual Machine (PVM)として用いる方針に切替えた。処理系としては、KLIC を用い、現在3台のSunワークステーションをイーサネットで結合して用いてい る(図--1) 。また、将来この分散環境に加える計算機とし て、生物学系の研究機関に豊富なMacintoshを考え、これにKLICをインストー ルした。この他クレイのCS6400(64PE)にKLICをインストールして共有メモリ型 並列環境を構築した。
図 --1: Sunワークステーションをイーサネットで結合した分散環境