最近の研究環境でもっとも興味深いもののひとつは、インターネットを始めと する分散環境での応用システムである。QUIXOTE を普及させるためにもこのような分散環境に適応 させる必要がある。しかし分散環境で QUIXOTE を利用するには解決しなければならない問題が数 多くある。複数の QUIXOTE データベースをいかに結合するか、データベース 間の矛盾をいかに解消するか、QUIXOTE の拡張問合せ機能をいかに分散環境に適用するか、 などである。Helios でも分散環境での異種情報源を統合する問題解決系とし てマルチエージェントに基づくアプローチが提案されたが、局所情報を融合す るための大域的な記述機能が欠如していた。言い換えれば、分散環境でのビュー、 あるいは大域的個別化機能である。本研究では、メディエータ・アーキチェク チャを QUIXOTE 向きに 拡張することによって上記機能を実現することを目指している。そのためには、 各情報源を表現するカプセル記述 (ラッパー) とそれら情報を統合するために メディエータ記述を明確にするほかに、情報の局所化も可能にしなければなら ない。
対象とする情報源は QUIXOTE だけではなく、半構造データを含む幅広い情報源 とするため、それらカプセル記述/自己モデル記述としては QUIXOTE を用い、融合するための メディエータ仕様記述としてはモジュールの拡張として情報源を位置付け、そ の所在を指定できるように QUIXOTE を拡張した。さらにメディエータで複数の情報源 を制御するために、データ・ディクショナリ/ディレクトリ (DD/D) を持たせ ている。包摂関係には各情報源に対応した局所的なものと、それらを統合した 大域的な包摂関係の2種類を考え、大域的包摂関係は DD/Dに持たせている。 問合せは、局所的包摂関係を大域的包摂関係に置換することによる拡張ビュー 機能、仮説生成による情報源の切替を可能にしている。これら情報源の統合を 自動化するのは本質的に困難なので、QUIXOTE と同様思考実験を行なう環境を考えている。
応用としては計算機援用協調作業のひとつであるワークフローと分散環境での 利用が注目されている開放型地理情報処理を検討している。ワークフローにつ いては、実際に業務を行なう人をシステムに組み込むために Helios のエージェ ントの概念を使用している。構造化された業務 (ワークフロー) をオブジェク トの集合として表現し、そのフローを2種類に分類したモデルを提唱している。 ひとつはプロダクションルールにイベントを導入し ECA ルールとし前向き推 論を行なうもの、通常の確定節として表現し後向き推論を行なうものである。 それらを統合したワークフローベースを定義し各種の問合せ機能をもたせてい る。開放型地理情報処理に関しては、空間情報と履歴情報を融合したモデルと、 地理情報を連続オブジェクトとして考えた場合のモデルを検討している。