知識情報処理などの応用の高度化に伴い、データベースに格納するデータや知 識も複雑化し、それらを表現し処理するための高度な知識表現言語とデータモ デルが求められている。第五世代コンピュータシステム (FGCS) およびその基 盤化プロジェクトの中では、そのような背景を踏まえて、演繹オブジェクト指 向データベースという新しいデータモデルを提唱し、そのための言語 (および システム) QUIXOTE を 研究開発してきた。さらに QUIXOTE の有効性を示すために、法的推論、自然言語処理、 遺伝子情報処理への応用システムが構築された。
現在 ICOT フリーソフトウエア (IFS) としては、QUIXOTE の処理系3種類:KL1 版 QUIXOTE , KLIC 版 (big-)QUIXOTE, 簡易版 micro-QUIXOTE が公開 されているが、多くの反省点も出てきている。今後 QUIXOTE を普及させていこうとす ると、言語自体および処理系が抱えている問題を解決しなければならない。 big-QUIXOTE は、KL1 から KLIC への移植時にコンパクト化に失敗し結果として巨大なシステムにな り、個人では保守ができない状態で、micro-QUIXOTE は移植性と開発期間の短縮に重点を置き過ぎたた めに (オブジェクトの意味論の変更など) QUIXOTE の特徴を大きく縮退させている。
本研究では QUIXOTE を より幅広い知識処理分野に普及させるために、移植性が高く、かつ QUIXOTE の演繹オブジェクト指向 データベースとしての本来の特徴を持っている処理系の研究および作成を行な う。処理系としての位置付けは big と micro の中間的な性格を持つが、内容 的には現在の big の言語仕様の部分集合ではなく、知識表現言語のプラット フォームとしての定義機能を含んだものを研究対象とする。さらにこの有効性 を示すために、新たにいくつかの応用での記述実験も行なっている。