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研究の背景と目的

論理型プログラミングは複雑な知識を簡潔に記述できる点において、手続き型 のプログラミングスタイルに大きく優っている。並列論理型プログラミングパ ラダイムは、この論理プログラミングの考え方を並列処理に素直な拡張したも のになっており、並列処理の利点を生かした高性能な知識処理の実現方式とし てその発展が期待されている。

しかし、並列論理型プログラミングは並列処理の記述性を優先するため、 Prolog のような逐次処理と後戻りを基本とした逐次論理型プログラミングに 比べて、知識情報の記述性において劣っている点がある。たとえば探索問題に ついて Prolog では探索の算法自体を処理系が提供するので (複雑な問題には 却ってプログラミングを難しくする面もあるが)、単純な問題については非常 に簡潔な記述ができる。それに比して KL1 などの並列論理型言語では、探索 の算法をプログラム上に記述する必要があり、記号的処理が手続き的言語より はるかに容易に記述できるとはいえ、逐次論理型言語に比べると記述が繁雑に なる。

また、並列論理型言語の処理系についても、筆者らが開発した汎用計算機上で 動作する高効率と高い移植性を両立した処理系 KLIC があるが、ソフトウェア 開発環境としての充実度は広く用いられている逐次型言語の処理系にはさまざ まな面で劣っており、処理の最適化の面でも残された課題が少なくない。

こうした諸点は、並列論理型プログラミングパラダイムの持つ本質的な問題で はなく、並列処理による大容量計算の需要が高まっている知識処理プログラミ ングに対する並列論理型技術の利点は大きい。しかし、使い勝手と処理効率の 両面での改善は、今後のこの技術の発展のために避けて通れない問題になって いる。

ICOT Free Software として公開・配布されている KLIC システムをベースに、 諸機能に改良・拡張を加え、並列論理型言語のためのプログラミングシステム として完成度の高いものとし、KLIC システムの利用範囲を拡大するのが、本 研究の目的である。より具体的には、以下の諸点を目的とする。

より高い性能の実現
残る改良が必要な項目をクリアし、KLIC の本来の設計の目指す性能を実 現する。これによって、性能面から KLIC の利用が困難だった応用分野につい て KLIC の利用範囲を広げる。
よりユーザフレンドリな環境の実現
トレース機能、プロファイル機能などを充実し、プログラム開発をさら に容易にする。これによって、デバッグやチューニングの困難さから並列化が 難しかった応用分野について、KLIC の利用範囲を広げる。



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