初年度の研究では、自然言語解析等のアプリケーションを記述にむけて、まず は既存のMGTPの証明機構を強化し環境整備をおこない、その後、実際にアプリ ケーションを記述しながら、MGTPをプログラミング処理系として完成させてい く。
具体的には、IFSとして登録されているKLIC及び、KLIC版MGTPをベースに以下 の項目について研究および開発を進める。
(1) 動的補題生成法の導入
タブロー法の改良技術として知られている、アトミック・カット、補題生成な どのアイデアは、制約MGTP上では負リテラルの伝搬としてとらえることができ、 制約MGTP上での制約機構の強化につながる。ただし、MGTPのような並列証明系 においては、このような静的手法を単純に適用するだけでは制約の伝搬が充分 に行えない。そこで、本研究では並列に処理される証明間の整合性を保ちつつ 補題を動的に生成する手法について提案し、実装をおこなう。
(2) 構文解析への応用
上記の動的補題化により、LR構文解析やBUPをMGTPで記述した際に発生する冗 長な解析が抑えられることが期待できる。そこで、動的補題化の効果を構文解 析により評価し、同じ構文木を繰り返し生成しない効率のよい構文解析器の記 述ができることを示す。
(3) 自然言語解析のための各種制約の記述と実装
制約に基づく自然言語解析の手法をMGTPプログラミングの観点から整理、検討 し、構文解析と意味表現を統一的に扱うための枠組をMGTP上で実現することを 目的とする。
具体的には、(2)で対象とした構文解析過程に、格フレームを制約情報として 与えるための機構をMGTPに加える。制約に基づく文法についても制約MGTP上で の実装を検討する。
(4) 制約伝搬機構の実装
(3)のような制約に基づく手法では、解析中の情報が証明モデル間にまたがっ て伝搬する。従来のMGTPでは値域制限性の条件により、このような情報の流れ が発生することは無かった。このため、本研究では、モデル間通信のための、 新たな実装法を開発する必要がある。
(5) MGTP処理系の入出力整備
現在のMGTPでは、公理系のわずかな変更に対しても(外延データであっても)、 MGTPプログラムからKLICへの翻訳系をその都度通し、さらにKLICによるコンパ イルを行わなければならない。また、証明結果の出力についてもユーザがその 形式を指定できるようにする必要がある。MGTPを汎用の推論エンジンとしてよ り完成度の高いものにするため、入出力に関する記述をMGTPの言語仕様に加え、 KLICにより実装を行う。