「ウィーン売買条約第II部」の条文
「ウィーン売買条約第II部」の条文を紹介しましょう。
- 第14条〔「申込」の間接的定義〕
-
- (1)
- 一又は複数の特定の者に向けられた契約締結の申入れは、
それが十分明確であり、
かつ、
承諾があった場合には拘束されるとの申込者の
意思が示されている
ときは、申込となる。
申入れは、
物品を示し、
かつ、明示又は黙示に数量及び代金を定め
又はその決定方法を規定している場合には、
十分明確なものとする。
- (2)
- 不特定の者に向けられた申入れは、
申込の単なる誘引
として扱う。
ただし、申入れをした者が異なった意向を明瞭に示して
いる場合にはこの限りではない。
- 第15条〔申込の効力発生時期〕
-
- (1)
- 申込は、被申込者に到達した時にその効力を生ずる。
- (2)
- 申込は、たとえ取消不能のものであっても、申込の撤回通知が
申込の到達前又はそれと同時に被申込者に到達する場合には、
撤回し得る。
- 第16条〔申込の取消可能性とその制限〕
-
- (1)
- 契約が締結されるまで、申込は取り消すことができる。
ただし、この場合には、被申込者が承諾の通知を発する前に
取消の通知が被申込者に到達しなければならない。
- (2)
- しかしながら、申込は、次のいずれかの場合には、取り消す
ことができない。
- (a)
- 申込が、承諾期間の設定その他の方法により、取消不能の
ものであることを示している場合。
- (b)
- 被申込者が、申込を取消不能のものであると了解したのが
合理的であり、かつ、被申込者がその申込に信頼を置いて
行動している場合。
- 第17条〔拒絶による申込の失効〕
- 申込は、たとえそれが取消不能であっても、
その拒絶通知が申込者に到達した時
は、その効力を失う。
- 第18条〔承諾、その効力発生時期、申込の承諾期間〕
-
- (1)
- 申込に同意する旨を示す被申込者の陳述その他の行為は、
承諾とする。
沈黙又は反応のないことは、それだけでは承諾とみなされる
ことはない。
- (2)
- 申込に対する承諾は、
同意の意思表示が、申込者に到達した時
にその効力を生ずる。
同意の意思表示が申込者の定めた期間内に申込者に到達しないとき、
また期間の定めがない場合においては、
申込者が用いた通信手段の迅速性を含め取引の状況を十分に
勘案した合理的な期間内に到達しないとき、
承諾は効力を生じない。
- (3)
- しかしながら、
申込の内容よりみて、
又は当事者間で確立された慣行若しくは慣習の結果として、
被申込者が申込者への通知をすることなく、
物品の発送に関する行為や
代金の支払等の行為を行う
ことにより同意を示すことができる場合には、
その行為が行われた時に承諾としての効力が生ずる。
ただし、その行為が前項に規定した期間内に行われた場合に限る。
- 第19条〔申込の条件付承諾〕
-
- (1)
- 承諾の形をとっているが、
付加、
制限その他の変更を含んでいる
申込に対する回答は、
申込の拒絶であり、反対申込となる。
- (2)
- しかしながら、承諾の形をとった申込に対する回答が、
付加的条件や異なった条件を含んでいても、
申込の内容を実質的に変更するものでない
場合には、
申込者が不当に遅滞することなく
その相違に
口頭で異議を述べ
又は
その旨の通知を発し
ない限り承諾となる。
申込者が異議を述べない場合には、契約の内容は申込の内容に
承諾中に含まれた修正を加えたものとする。
- (3)
- 付加的条件又は異なった条件であって、
特に
代金、
支払、
物品の品質
及び数量、
引渡の場所
及び時期、
一方当事者の相手方に対する責任の限度、
又は紛争の解決方法に関するもの
は、申込の内容を実質的に変更するものとして扱う。
- 第20条〔申込の承諾期間の計算方法〕
-
- (1)
- 申込者が電報又は書簡中で定めた承諾期間は、
電報の発信を依頼した時点又は書簡に示された日付、
またかかる日付が示されていない場合においては
封筒に示された日付から起算する。
申込者が電話、テレックスその他の瞬時的通信手段によって
承諾期間を定めたときは、その期間は、申込が被申込者に
到達した時点から起算する。
- (2)
- 承諾期間中の公の休日又は非取引日も期間の計算に算入する。
ただし、期間の末日が、申込者の営業所所在地の公の休日又は
非取引日にあたるため、承諾の通知が期間の末日に申込者に
配達され得ない場合には、期間はこれに次ぐ第一の取引日まで
延長される。
- 第21条〔遅延した承諾〕
-
- (1)
- 遅延した承諾といえども、申込者が有効な承諾として扱う旨を
遅滞なく被申込者に口頭で通告し又はその旨の通知を発した
場合には、承諾としての効力を有する。
- (2)
- 遅延した承諾を含む書簡その他の書面が、通常の通信状況で
あれば適切な時期に申込者に到達したであろう状況の下で
発送されたことを示しているときは、申込者が遅滞なく被申込者に
対して申込が既に失効していたものとして扱う旨を口頭で
通告するか、又はその旨の通知を発しない限り、遅延した承諾
であっても承諾としての効力を有する。
- 第22条〔承諾の撤回〕
- 承諾は、その撤回通知が、承諾の効力が生じたであろう時よりも
前又はそれと同時に申込者に到達すれば、撤回できる。
- 第23条〔契約の成立時期〕
- 契約は、申込に対する承諾がこの条約の規定に従って効力を
生じた時に成立する。
- 第24条〔意思表示等の「到達」の定義〕
- この条約第II部の適用上、
申込、
承諾の宣言、
その他の意思の表示
が相手方に「到達」した時とは、
相手方にそれが口頭で伝えられた時、
又は
その他の方法で相手方に個人的に
若しくは相手方の営業所又は郵便送付先に、
また相手方が営業所も郵便送付先をも有しない場合においては
相手方の常居所に配達された時とする。