平成10年度 委託研究ソフトウェアの提案

15.移動ロボットの並列協調制御ソフトウエアの研究開発

研究代表者: 溝口 文雄 教授
東京理科大学



[目次]

  1. ブラッシュアップ対象ソフトウェア名称
  2. 体制/方法
  3. 想定されるブラッシュアップ成果

[ブラッシュアップ対象ソフトウェア名称]

[体制/方法]

(1) 体制

 氏名 所属
研究代表者 溝口 文雄東京理科大学理工学部 経営工学科教授
研究協力者大和田 勇人 同講師
研究協力者西山 裕之同博士2年
研究協力者平石 広典同博士2年

(2) ブラッシュアップの方法

 平成7,8年度委託研究「協調ロボットプログラミング言語/システムの開発」および平成9年度委託研究「移動ロボットの並列協調制御ソフトウエアの研究開発」で開発したマルチエージェントロボット言語MRL(Multi-agent RobotLanguage)に焦点を当てる.MRLはマルチエージェントロボットの協調作業を容易に実現する目的でKLICを拡張した形で設計したもので,その成果はマルチエージェントシステム国際会議(平成10年7月)論文集にも掲載され,世界的に認知されている.本委託研究では,MRLをさらに発展させ,情報系研究者のみならず,ロボット工学系研究者にも広く利用してもらうために,次のような方法でブラッシュアップを行う.

  1. マルチエージェント言語MRLのセマンティックスとマニュアル.
    これまでの委託研究成果では不明確であったMRLのセマンティックスを定義し,MRLのマニュアルを整備することで,MRLの言語仕様,特徴,プログラミング方法論を明らかにする.

  2. MRLの仕様記述形式とプログラム開発ツール.
    MRLプログラムの生産性,信頼性を向上させる目的で,仕様記述形式を定義し,仕様からMRLプログラムの変換系を含むプログラム開発ツールを作成する.

  3. ロボティックエージェント共通のインタフェースとプログラム集
    腕型ロボット,移動ロボット,視覚センサー,赤外線センサーなどをロボティックエージェントとして統一的に扱うための共通インタフェースを作成する.さらに,インタフェースの使用例を含んだプログラム集を整備する.

  4. WWW上でのMRLプログラムの実行を指定するスクリプト言語の開発
    MRLプログラムが至る所で実行できるように,HTMLファイルの中でスクリプトが記述できるようにし,インターネット接続されたあらゆる端末からMRLプログラムが実行できる環境を構築する.


[想定されるブラッシュアップ成果]

  1. ブラッシュアップ項目

  2. 上記のブラッシュアップによるユーザの立場からみた改善点

     MRLの言語仕様が明らかになるとともに,MRLプログラムサンプル集によってMRLによるロボットコントロールの具体的な方法を利用者に提示することができる.従来のロボットプログラムはOSに組み込まれたセマフォを利用していたが,エージェント間通信や優先制御に対してストリーム通信やKL1の制御機構によって抽象度が高いままでプログラムを構成することができるようになる.さらに,プログラム開発ツールによって,実行可能な仕様を扱えるようになり,並列論理プログラミングの枠組での高度なロボットソフトウエアが実現できる環境が整うことになる.従来,ロボットのソフトウエアは個々のロボットごとに作成され使い捨てされてきたが,MRLによって再利用可能なロボットソフトウエアを実現することができる.このように,本委託研究の成果物は知能ロボット研究を推進するツールとして利用できるものである.

  3. 上記のブラッシュアップ以外のソフトウェア機能の改良

     MRLプログラムを呼び出すタグをHTMLファイルに埋め込めるスクリプト言語を開発し,そのスクリプトを処理するブラウザによって,インタネットに接続されたUNIXマシンからMRLプログラムを起動できるようにする.HTMLファイルではMRLプログラムの入出力を指定することができる.これによって個々の エージェントをMRLプログラムとして用意し,それらの協調はHTMLファイルを作成することで実現できる.すなわち,エージェント間通信に基づく協調作業 のためのプログラムはHTMLレベルで行なうことができ,協調ソフトウエアの構築を容易にする.なお,スクリプトを処理するブラウザのプロトタイプはすでに完成しており,その成果はIROS'98(論文名:Web-based communication and control for Multiagent robots)で発表予定となっている.本委託研究では,これを安定して動作するように改善する.


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