平成10年度 委託研究ソフトウェアの提案 |
研究代表者: | 五十嵐 健夫 博士課程 学生 |
東京大学 情報工学専攻 |
| 氏名 | 所属 |
研究代表者 | 五十嵐 健夫 | 東京大学 情報工学 |
研究協力者 | 田中 英彦 | 東京大学 情報工学 |
研究協力者 | 松岡 聡 | 東京工業大学 数理計算機工学 |
現在、Visual Basic と Visual C++ によって実装されている描画システム全体をJAVA に移植し、さらに新機能を追加する。(新機能については (3) を参照のこと)。移植については、操作性の向上とともに特にソフトウェアの再利用性および可読性の向上が期待され、研究成果の利用に大きく貢献するものである。
現在の実装は、インタフェース部分が Visual Basic で記述され、制約処理系がVisual C++ で記述されている。これは、Visual Basic によってインタフェース部分が容易に記述できることと、Visual C++ よって時間のかかる制約解消計算が高速に行えるという理由のためであり、実装当時の状況では最良の選択であったといえる。しかし、ソフトウェアの他のアプリケーションでの再利用および、ソースコードを読むことによるアルゴリズムの学習といった観点からは、多少難点があるといわざると得ない。また、この初期バージョンの実装は、これまでにない描画システムのパラダイムを試行錯誤の結果実現した最初のシステムであったため、ソースコード自体にも開発の過程を反映した矛盾する点がいくらか残っており、これも再利用の障害になっている。最後に、Visual Basic と Visual C++ を利用しているため、UNIX や Machintosh などのプラットフォームでは一切利用できないという問題も抱えている。
これらの問題点を解決するために今回のブラッシュアッププロジェクトでは、システムの JAVA 言語への完全移植およびインタフェースの改良と新機能の追加を行う。Visual Basic とVisual C++ の組み合わせと比較した場合の JAVA 言語自体のもつ利点として、
また一度作り上げたシステムを移植によって作り直すことによるメリットとして
具体的には、基本的にすべての機能を移植するほか、
また、利用者の立場からみると、
実際に利用者が、成果ソフトウェアのソースコードを読んだり、自分のソフトウェアの一部に応用したりする場合に最も重要なのは、2次的な情報に過ぎないマニュアルや解説文でなく、ソフトウェアが読まれることを前提として書かれた良く整備されたソースコードである。このような点を考えると、今回提案するソースコードの書き直しと移植作業はソフトウェアの2次利用といった観点から考えて、詳細なアルゴリズム解説の新規作成に相当する作業であると考えられる。
操作説明に関しては、現在の版に付随しているマニュアルを更新する他、必要な情報を操作中に得ることのできるオンラインヘルプをつける予定である。オンラインヘルプを利用することにより、静的なマニュアルから得られる情報に比べて、よりユーザの必要にあった情報を適宜与えることが可能となり、操作の習得の助けになることが期待できる。
これは、描画に際して図全体を連続的に拡大したり縮小したりする機能である。細かい部分を描く場合にはその部分にズームインして拡大表示することにより正確な描画が可能となる。また、全体的なレイアウトを観察する場合にはズームアウトして縮小表示することによってより広範囲を一度にみることが可能となる。さらに、ズームにより整形に伴う各種パラメータの自動調整が可能となる。すなわちズームインしている場合には、ユーザが細かい作業をしようとしていることがわかるため、整形に関わるパラメータ設定を細かい作業用に動的にチューニングし、またズームアウトしている場合には、おおまかな作業をしようとしていると考えてパラメータを粗い作業用にチューニングすることができる。これにより、従来困難であったより複雑な図形の正確な描画が可能となる。
これは画面全体を上下左右に連続的にスクロールする機能である。この機能により、ユーザは画面の広さにしばられることなくより広いスペースを利用して描画を進めることが可能となる。
本予測機能は、最近の我々の研究成果[1,2,3]として得られたものであり、すでに描かれた図形と最後に描いた図の総合的な位置関係から次の描画を予測して提示するものである。提示された予測候補の中に気に入ったものがあれば、それをクリックするだけで選択することができ、その時点でさらに次の予測が生成され提示される。このようにする結果、予測が成功しつづけている限りにおいては、表示される候補を次々にクリックしていくだけで、かなり複雑な図形を正確かつ高速に描画することができる。予測内容が気にらなかった場合には、希望する図形をそのまま手書きで描くことで自然に整形処理に以降することができるので、予測機構を組み入れることによる作業負担の増加もほとんどないといえる。本手法は、常に希望する線分の概形を注意深く描かなければならないという対話的整形システムの欠点をおぎなうもので、描画負担の軽減に非常な効果が認められる。また、最近研究のさかんに行われている予測インタフェースの実現例としても興味深い。本予測手法により、描画システムはより使いやすくなる他、見た目にも新鮮な機能でもあり、より多くのユーザを獲得する一助になると考えられる。
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