(10) ゴールに依存した抽象化を用いた法的推論システムの開発
研究テーマ、研究代表者:
(1)研究テーマ
ゴールに依存した抽象化を用いた法的推論システムの開発
(2)研究代表者(氏名、所属、役職)
角田篤泰
北海道大学法学部、講師
報告項目
(1) 研究の目的
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ゴールに依存した抽象化(以下GDAと呼ぶ)の枠組みを利用し、法律の目
的に依存した類推機能を備えた法的推論システムの開発を行う。特に、本年
度はシステムにGUIを導入し利用者の便を図ること、及び、例題・操作手
引き・内部仕様等についてのドキュメントの拡充を目的とする。
(2) 研究の進捗状況
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概ね計画書の線表通りの進捗状況である。開発は9割以上終了し、ドキュメ
作成作業に入った。
- GUI化に関しては、証明木、概念階層、ホーン節の各グラフィック表示
機能うち、証明木と概念階層については終了している。ホーン節の表示は
現在のところGUIテキスト部品上にテキスト表示しているに留まってい
る。また、すべての操作コマンドはGUI上のボタン・メニュー等へ移行
が完了した。
- OSL推論部とGDA部分を分離した利用のためのインターフェースにつ
いては、現在コーディング中である。
- GUI部品モジュールは開発を終了した。
- 操作説明書と例題集に関しては現在2割程度が記述された。
- プログラムの解説の拡充に関しては、GUI部品の内部仕様書記述の8割
程度が終了している。外部仕様書作成作業はまだ開始していない。
(3) 現在までの主な成果
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- GUI化に関しては、これまでのキャラクタ型のユーザ・フェースの全機
能がGUIによって代替可能となった。また、概念階層や証明木はグラフ
ック表示のため非常に見やすくなった。
- 例題に関しては、実際の判例に基づき、民法における「代理権濫用」の問
題を中心に整理を進めている。この問題は民法総則の中でも関心の高い代
理理論と意思表示の議論を含んでいる。この部分を分かりやすく簡略化し
て知識記述を行った実験は既に成功している。
- 独立して利用可能なGUI部品モジュールのパブリックな述語単位にモジ
ュール内の約8割の部分についての説明が内部仕様書に記載されている。
各説明は構造化チャートライクな記述方式により、アルゴリズムが理解可
能なように努めて記述されている。
(4) 今年度目標成果ソフトウェアイメージ
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GDAに基づく法的類推機構を中心にして統合した法的推論システムが提供
される。シェイプアップされる点は以下の通りである。
- これまでのキャラクタ型のインターフェースが全面的にGUIに移行し、
操作性・可読性が飛躍的に良くなる。
- オーダーソート論理のインタプリタ部分やGDA部分を独立に利用でき、
各々の実験や学習に利用可能である。
- GUI部品モジュールが詳細な仕様書とともに提供されるため、これを利
用すれば、SICStus-PrologからTcl/Tkを呼び出してGUI開発を行う際の
労力を削減できる。フレームワーク構築に関心を置いている研究室でデモ
用GUIが必要な時などに本モジュールは適している。
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