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ブール環とグレブナー基底

単位元をもつ可換環 B が以下の性質を持つとき、これを ブール環とよぶ.

∀ x ∈ B x2 = x

ストーンの表現定理を用いると、 B から の中への同型写像 Φ

で得られる. ここで、St( B) は B の極大イデアル全体の集合を表す.
B/I GF( 2 ) と同型であるので、 BGF( 2 ) の直積のなす環の部分環と同型であることがわかる. B が有限ブール環の場合、 St( B) は有限なので、直積は有限個であり、さらにΦ は上への写像になるので、 B GF ( 2 ) の有限個の直積のなす環と同型になる.

以下では、ブール環 B 上の多項式環において作業をおこなう. 単項を表す記号としてギリシャ文字 α、β、γ 等を、ブール環 B の要素を 表す記号として abc 等を、多項式を表す記号として fgh 等を用いる. また、単項上のアドミシブル順序を1つ固定し、これによる f の最大の単項を lt( f )、 その係数を lc ( f )、最大の単項式すなわち lc ( f ) lt ( f ) を lm ( f ) 、f -lm( f ) を rm ( f ) で表す.

定義 2.1
多項式 f = + g (ただし lm ( f ) =)にたいして、f によるモノミアルリダクション → f を以下で定義する.

bαβ + h fbαβ + h + b( a + 1 )β(α + g )(ただし、ab ≠ 0)

定義 2.2
多項式 f が、 lc ( f ) f = f をみたすとき、f ブール閉であるという. lc ( f ) f f ブール閉包とよび、 bc ( f ) で表す.(注意 任意の多項式のブール閉包はブール閉である.)

定理 2.1
F をブール閉な多項式の集合とすると、 F による同値関係とイデアル ( F ) による同値関係は一致する.

グレブナー基底の定義には、いろいろな方法があるが、上のモノミアルリダクションによって 以下のように定義する.

定義 2.3
多項式の有限集合 G が以下の条件をみたすとき、G はグレブナー基底であるとよばれる.

G による同値関係とイデアル ( G ) による同値関係が一致する.

・→G はこの同値関係の完備化システムである. すなわち、任意の多項式 fg

にたいして、 f g f G = g G .

定義 2.4
グレブナー基底 G にたいし、G の任意の要素 f が自分以外の G の要素による モノミアルリダクションによって書き換えられないとき、 G 既約グレブナー基底とよぶ.

定理 2.2
G を既約グレブナー基底とするとき、G のすべての要素は ブール閉な多項式である.

定義 2.5
既約グレブナー基底 G がさらに以下の性質をもつとき、G 正規グレブナー基底とよぶ.

G の二つの要素で、最大単項が一致するものはない

正規グレブナー基底は次の重要な性質をもつ.

定理 2.3
正規グレブナー基底はユニークに定まる. すなわち、( G ) = ( G' ) なる正規グレブナー基底 G G' は一致しなければならない.

さて、上に述べたように、任意のブール環 B GF ( 2 ) の直積 GF(2)S のなす環 の部分環に同型になる. この同型写像 Φ を1つ固定し、これを用いて、 ブール環 B における多項式 f にたいして、その i( ∈S ) 成分 fi を、 f のすべての係数 a Φ( a ) でおきかえて得られる GF ( 2 ) 上の多項式と定義する. B 上の多項式の集合 F にたいしても、 { fi | f ∈ F } を Fi で表す. これにたいし、次の定理がなりたつ.

定理 2.4
ブール閉な多項式の集合 G にたいして、 以下の条件は同値になる.

G は既約グレブナー基底である.

S の各要素 i にたいして、 Gi は既約グレブナー基底である.



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