平成9年度 委託研究ソフトウェアの提案 |
1997年1月17日、(株)富士通のホームページのフリーソフトの欄に
Breakfast がアップされると同時に、添付データとして同サイトからのIFS日
本語文法規則のダウンロードサービスが始まっている。IFS規則に関し、ダウ
ンロード数は、2桁(後半)件数/月程度である。とりわけ、言語処理学会が開催
された3月には、佐野の自然言語処理ツールのチュートリアル講演なども影響
し、Breakfast を中心に、富士通全体のアクセスログのベスト 100 に入るほ
どのアクセスがあった(正確な数字は企業内データのため伏せている)。
IFS日本語文法規則は、ターゲットの市場を拡大した結果、研究分野
における利用だけでなく、より広い分野で潜在的な利用度が向上している。
(URL → http://www.fujistu.co.jp/hypertext/free/breakfast)
今後、戦略的に当ソフトウェアの利用の拡大を行うめには、 (1)Windows 95/NT 用GUIインタフェースを開発する、(2)アプリケーション指 向の利用者ガイドを充実させることが必須である。
一般に、ソフトウェアの利用を促進するためには、そのソフトウェア が提供する機能を、利用者に読みやすく、且つ理解しやすく、しかも、使い易 く解説する積極的な努力が必要である。いわゆるマニュアルの品質が、そのソ フトウェアの使用感や利用の容易さに影響し、プログラム自身の能力さえも評 価することになる。添付資料であるマニュアル自身も、重要なソフトウェアプ ロダクトであると考えられる。
例えば、ビジネス用アプリケーションソフトウェアでは、80%ほどの 利用者は、そのソフトウェアの20%程度を理解すれば、業務に十分に利用して ゆくことができるといわれている。開発者は一般に(開発者指向によって)すべ ての機能説明を説明書に盛り込もうとするが、利用者はそのすべての理解はで きない(あるいはする必要がない)。アプリケーション指向の観点に立って、機 能の選択を行い、動作説明を限定することが利用者サイドにたった説明書(マ ニュアル)といえる。利用者に役に立つマニュアルとは、その使う目的や利用 対象者等に応じて書き分けられている必要がある。マニュアルにも記述の体系 が必要となる。
研究利用が主な目的であるソフトウェアでは、上記と違いはあるもの の、しかしながら多数の利用者が100%のソフトウェア理解を求めているとは 考えられない。応用するに足る最小限度の理解が容易であるほど、ユーザーサ イドの負担が減り、ソフトウェアの利用度は向上する。
本研究では、利用者指向の視点に立って既存のソフトウェア(IFS日本 語文法規則)を見直し、その結果を基に、(1)パイロットモデル版インタフェー スを拡充し、IFS日本語(形態素)解析パッケージ用インタフェースを作成する、 (2)マニュアルの体系化と構造設計を行い、日本語マニュアルの再構成を実施 する。当該マニュアルの英語版と中国語版(簡略化した試用版文章に限定)を作 成する。
日本国内においても、技術開発や先端研究のために、外国語の論文の 参照が日常的に行われている。日本語形態素解析システムもそのソフトウェア の直接的な利用だけでなく、多様な利用と参照に対応するリリース形態を目指 すことが必要である。簡略版ながら中国語版マニュアルの作成は、ワードスペー スを持たない中国語解析研究の際の参照ソフトウェアとしての役割を積極的に 担うことを意図する。
一般に、ソフトウェアマニュアルは、初心者から専門家までに及ぶ広 い範囲の読者対象を持つ。各階層において適切な対応が求められている。本研 究では、利用対象を絞り込み(文科系・社会科学系研究者)、対象読者の要望に 答えるマニュアルの作成を目指す。ユーザーモデルの検討と、マニュアルの開 発工程、および各工程での利用対象者の視点に立つ技術検討を実施する。
この結果を基に、IFS日本語(形態素)解析パッケージ用マニュアルを 再編成し、マニュアル構成を変更する。IFS日本語(形態素)解析規則と、形態 素解析エンジンをまとめて一つのシステムと考え、それぞれのソフトウェアの マニュアルを合わせたものではなく、複合システムとしてのマニュアル開発計 画を立てパッケージマニュアルを作成する。 多言語化対応として、当該パッケージマニュアルを基に、英語マニュ アルを作成する。簡略版として中国語版マニュアルの作成を行う。
マニュアルの開発プロセスを以下に挙げる。
(1)マニュアル開発計画書の作成
システムの機能調査とユーザータスクの再調査
対象読者の絞り込み(文科系・社会科学系研究者)
アプリケーション指向の説明を中心とした構成の再編成
記述内容と文書量(記述粒度)の検討
Windows 95/NT 関連技術の調査
執筆方針の検討(文章表現仕様、図表表現仕様等)
多言語化対応
(2)マニュアル記述
(3)品質チェック
| 氏名 | 所 属 |
研究代表者 | 佐野 洋 | 東京外国語大学外国語学部 |
研究協力者 | 高橋作太郎 | 東京外国語大学外国語学部 |
東京外国語大学 外国語学部 中国語科教官(若干名)
(株)日本電子計算 大阪支店(Windows95/NT 版インタフェース作成における 指導協力)
(A,B 両名とも2年間確保が可能。作業量の必要に応じて、その他の者にもア ルバイト依頼を行う予定)
(作業量の必要に応じて、本学中国語科教官に依頼を行う予定)
IFS日本語文法規則とWindows95/NT用形態素解析エンジン (Breakfast)を組み合わせたパッケージソフトウェア。いわゆる日本語形態素 解析システム。
上記パッケージを利用者が容易に利用するためのGUIインタフェース。
Windows OS コンピュータ市場をターゲットとする。利用対象者を、 専門研究者ではなく、一般利用者に近い文科系および社会科学系研究者に絞り 込む。これらの利用者に特化した利用説明書をパッケージ添付の形で提供する ことによってターゲット市場での利用拡大を目指す。
(3)で提供されるマニュアルの英語版、および簡易バージョンの中国 語版を作成することによって利用対象者を一層拡大させる。また海外からの当 該ソフトウェアに対する参照(レファレンス)度を向上させる。
IFS日本語(形態素)解析パッケージを利用するための Visual Basic で記述されたインタフェース用ソフトウェア。
マニュアル開発計画書に従って作成した日本語版、英語版、中国語版 の利用説明書
動作環境 Windows95/NT OS 搭載のパーソナルコンピュータ
日本語版マニュアル
英語版マニュアル
中国語(簡易)版(GBフォント対応)マニュアル
(大陸側へのリリースに対応)
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