平成9年度 委託研究ソフトウェアの中間報告
(21) 並列アクティブデータベースにおけるI/O処理の高速化
研究代表者:
横田 治夫 助教授
北陸先端科学技術大学院大学 情報科学研究科
(現・東京工業大学大学院 情報理工学研究科 助教授)
研究テーマ、研究代表者:
(1)研究テーマ
並列アクティブデータベースにおけるI/O処理の高速化
(2)研究代表者(氏名、所属、役職)
横田 治夫、北陸先端科学技術大学院大学 情報科学研究科 助教授
記述項目:
(1)研究進捗状況
並列アクティブデータベースにおける I/O 処理の高速化に関し て、ジェネリックオブジェクトによる KLIC の低レベルI/Oの 高速化と、並列ディスク向けデータアクセス手法の高速化の2つ を対象に研究を進めている。KLIC の低レベル I/O の高速化に 関しては、基本となる新しいオブジェクト型を実際にインプリメ ントし、並列計算機上で基礎実験とその評価を行なっている。 並列ディスク向けデータアクセス手法の高速化に関しては、並列 ディスクに適したディレクトリ構造である Fat B-Tree を提案 し、モデルによる机上の計算により従来の手法との比較を行なっ ている。
klic と Java のメッセージインタフェースを提供する javakli の作成を進めている。javakli の仕様検討や、設計を行ない、現 在具体的な実装を進めている。
(2)現在までの主な成果
KLIC の低レベル I/O の高速化:
ジェネリックオブジェクトで新しくページオブジェクト型を定義 し、これを用いて I/O をページ単位で効率よく行なう方法につ いて検討した。さらに並列計算機 nCUBE2 上での実験を通して、 このページオブジェクトを用いた I/O が、従来の KLIC の I/O の性能に比較して大きな性能の改善が得られることを示した。 この成果を 97 年秋期の情報処理学会第55回全国大会にて発表し た(講演番号 4AC-7、「並列論理型言語 KLIC による並列データ ベースの I/O 処理の高速化」)。
並列ディスク向けデータアクセス手法の高速化:
並列システム向けにこれまで提案されていた B-Tree のインデッ クスノードを全 PE にコピーとして持つ方法と我々が提案してい る各 PE が部分木を持つ Fat B-Tree 方式に関し、モデル式を 立てて解析し、比較を行なった。その結果、Fat B-Tree は、ス ループットおよびレスポンスタイムの両方について、従来の方法 よりも大幅に性能を改善できることが分った。また、Fat B-Tree は PE 数の増加に対してスケーラビリティが良いことも分った。 この成果は、12 月の電子情報通信学会データ工学研究会で発表し た(信学技報 DE97-77:「並列データベースシステムにおける更新 を考慮したディレクトリ構成」)。
(3)今後の研究概要
KLIC の低レベル I/O の改善に関しては、新しいデータ型である ページオブジェクトを関係データベース演算(選択、射影、結合演 算等)中で直接利用できるよう、ページオブジェクトにメソッドと して、これらの演算をインプリメントする予定である。
Fat B-Tree に関しては、実際の性能を評価するため、nCUBE3 等 の並列計算機にプロトタイプを実装する予定である。同時に、Fat B-Treeのような大規模並列環境向けデータ構造のための、効率の 良い排他制御方式についても検討する。
(4)今年度目標成果ソフトウェアイメージ
今年度の成果ソフトウェアとして、ページオブジェクトの導入によ り現在のインプリメント済みのアクティブデータベースに比較して 10倍以上の処理性能を持つものを提供する予定である。Fat B-Tree の部分については、まだ残された課題も多くソフトウェアとして公 開できるのは来年度以降の予定である。
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