平成9年度 委託研究ソフトウェアの中間報告
(17) 階層連立1次方程式のための効率的解消系の開発
研究代表者:
松岡 聡 助教授
東京工業大学大学院 情報理工学研究科 数理・計算科学専攻
研究テーマ、研究代表者:
(1)研究テーマ
階層連立1次方程式のための効率的解消系の開発
(2)研究代表者(氏名、所属、役職)
松岡 聡
東京工業大学大学院 情報理工学研究科 数理・計算科学専攻 助教授
記述項目:
(1)研究進捗状況
階層連立1次方程式(hierarchical linear system, HLS)を 解く制約解消系を研究・開発している.HLSとは1次方程式から なる制約階層に関する,我々が提案した新しい定式化である. HLSの理論および解消アルゴリズムは,線形代数と線形計算を 基礎とし,従来のグラフ理論を基礎とする局所伝播法と異なり, 1次方程式を適切に扱うことができるという特徴を持つ.
我々はこれまでに,この特徴を活かして,信頼性が高く効率的 な制約解消系HiRiseを設計し,その基礎部分を実装した.
また,HiRise解消系を利用して,GUIを備えたサンプルアプリ ケーションを作成した.
(2)現在までの主な成果
HiRise解消系の設計において,外部的には制約階層を扱う解消 系として利用できるように,レベルによる制約のグループ分け, stay制約およびedit制約の提供,プランニングと実行の2段階 解消などを行った.HiRise解消系の実装では,LU分解による アルゴリズムを採用することにより,制約解消の実行段階の効 率化を図った.さらにWindows 95/NT上で動作する,GUIを備 えた簡単なサンプルアプリケーションを作成し,現在のHiRise 解消系が一定の性能を実現していることを確認した.
(3)今後の研究概要
まず,HiRise解消系本体のさらなる性能向上を試みる.現在 採用しているLU分解アルゴリズムは,Crout法を応用したもの である.しかし,他のアルゴリズムの方が,GUIなどへの応用 で見られる制約系の疎性に有効である可能性があり,性能向上 の余地があると考えている.また,HiRise解消系のアプリケー ションプログラミングインターフェース(API)提供部の充実を 図る.現在,提供しているのは必要最小限のプリミティブのみ である.今後,1次方程式制約の記述を容易にするパーザーの 作成や,C++のコンストラクター/デストラクターなどの言語機 能を活用したAPIの設計および実装を予定している.
(4)今年度目標成果ソフトウェアイメージ
成果ソフトウェアは,HiRise制約解消系と,そのサンプルアプ リケーションから構成される.HiRiseは1次方程式からなる制約 階層の解消系であり,stay/edit制約の提供や,プランニング/ 実行の2段階解消などの実現により,GUIの開発に適している. 既存の制約階層解消系と異なり,HiRiseは内部で健全かつ完全 な数値的アルゴリズムを実行しているという点で特徴的である. このため,HiRiseを利用することにより,プログラマーはより 信頼性の高いシステムやアプリケーションを開発できる.また HiRiseは,既存の制約階層解消系に比べて充実したAPIを提供 するため,アプリケーションのプログラミングがより容易になる.
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