平成7、8年度AITEC委託研究「KLIC上のMGTP処理系」において、自動推論シ ステムMGTPをKLIC上に構築し、MGTPをUNIX上で利用できる環境を整備し、第五 世代コンピュータプロジェクト技術の普及を図ってきた。
逐次マシンを対象としたこの研究とは別に、PIMの耐用年数と並列版の普及と いう点を考慮してMGTPの並列化を並列UNIXマシンを用いて検討してきた。そこ で明らかになったのは、PVMを利用して従来の細粒度並列化を行った場合には、 PIMに匹敵する並列性能は得られない、ということである。このように 並列版の普及という点のみならず総合性能向上という点でも、PIM/m上で開発 してきたMGTPの並列化技術を踏まえた、市販の汎用並列マシン上での並列化技 術の開発が必要になってきている。
また、推論システムMGTPの応用として、様々な論理(失敗による否定 (NAF)、 様相論理、アブダクションなど)をMGTPの上で扱うための拡張が行われてきて いる。これらは、いずれもMGTPをメタプログラミングシステムとして動作させ るという方法に基づいている。通常この方式で問題となるオーバヘッドについ ても、MGTPの場合比較的小さいため(2〜3倍程度)、重大な障害とはなって いない。むしろ、問題記述が極めて簡易であるなど、実用的なメリットが認め られ、法的推論や組合せ最適化問題における探索など、メタ的な推論を必要と する分野への適用の期待が高まっている。
一方、普及化促進の観点からは、WWW技術を利用した方法が有望となってきて いる。WWWブラウザはUNIXのみならず、Windows、MacOSなどほとんど全てのプ ラットホームで利用可能である。したがって、ブラウザ上で動くソフトウェア は、その普及を図る上で必要となる二つの技術的課題(1)多くのプラットホー ムで利用可能であること、(2)インターネットを通じて簡単に配布できること、 を自動的に解決している。
上記背景のもと本研究では、(1)汎用並列マシン上で効率良く推論するMGTP、 (2)MGTP上に高度推論機構を構築するために必要となる基盤技術、(3)WWWブラ ウザ上で利用できるMGTPの実行環境、の研究開発を行なうことを目的とする。