平成7年度 委託研究ソフトウェアの中間報告

(12) 協調ロボットプログラミング言語/システムに関する研究

研究代表者:溝口 文雄 教授
      東京理科大学 理工学部 経営工学科


[中間報告]

1)研究進捗状況
KL1の論理性と並列性を利用したロボットの協調作業システムを開発し,KL1のロボット制御への応用可能性を示す.本研究ではKL1とロボット協調作業の間にある次のアナロジーを基にする.

KL1のゴール    <=>  ロボットの作業目標 
プロセスの並列処理  <=>  複数のロボットの並行作業 
プロセス間通信と同期 <=>  通信に基づく協調作業

このアナロジーに従って,ロボット同士の複雑な作業を記述するロボット言語を設計し,さらにマルチエージェントモデルを導入して、ロボット言語の記述力を実験的に明らかにすることを目的とする. 研究方法は次のステップで実施される. ステップ1(ソケット通信部の構築) KLICのプロセスは抽象度が高いため,規定されたロボットへコマンドを送るために,UNIX上にロボットを制御するシステムを組み込み,ソケットを使ってKLICと通信する.

ステップ2(環境監視部の構築) 視覚センサからの情報を管理するシステムをC言語で低レベルの監視を行ない,KLIC上で環境の変化を認識するシステムを構築する.

ステップ3(KLICによる協調作業の実現) 従来,筆者らはKL1でロボットシステムを構築したが,作業対象に依存し過ぎていた.そこで,ロボットの台数,環境に依存しない汎用システムをKLIC処理系で構築する.ここではステップ1,2で開発したモジュールがKLICの組み込み述語として使われている.

ステップ4(マルチエージェントモデルの導入) エラーリカバリーを含むリアクティブな処理と熟考性を考慮に入れた処理を融合したシステムをKLICで実現する.

ステップ5(ロボット言語の設計) ステップ4のプログラム事例を基にして,ロボット協調作業に対する記述力の高いロボット言語を設計する.

2)現在までの主な成果
  1. ロボットの直接制御を行なうシステムをC言語で作成した.これにより,KLIC上からロボットの制御が可能になった.
  2. 環境監視部を構築した.これにより環境変化の情報をストリーム通信により獲得することができるようになった.
  3. KLIC上で汎用的な協調作業システムを構築した.これにより任意のロボットの組合せによる作業が可能になった.
  4. マルチエージェントシステムのプロトタイプを開発し,積木の片付け問題に適用した.その結果リアクティブな作業が実現できた.

以上の成果は,本年度第9回人工知能学会全国大会にて発表した. また,第52回情報処理学会全国大会においても発表を予定している. 以下はそのリストである. 溝口 文雄,西山 裕之,飯塚 圭一
"KLICによるマルチエージェントロボットシステム -作業協調モデルの設計-" 第9回人工知能学会全国大会.13-9,pp287-290(1995).

溝口 文雄,飯塚 圭一,西山 裕之
"KLICによるマルチエージェントロボットシステム -実装と評価-" 第9回人工知能学会全国大会.13-10,pp290-293(1995).

溝口 文雄,飯塚 圭一,西山 裕之
"マルチエージェントによる協調ロボットシステム -ロボット言語の設計-" 第52回情報処理学会全国大会

溝口 文雄,西山 裕之,飯塚 圭一
"マルチエージェントによる協調ロボットシステム -協調プランナの設計-" 第52回情報処理学会全国大会

3)今後の研究概要

4)今年度目標成果(イメージ)
今年度は,KLICにロボット制御に関する組み込み述語を付加するかたちで,ロボット言語を開発する.この組み込み述語は,pick and placeというロボットの基本コマンドと,KL1の同期制御を使った協調型のコマンドを提供している. ユーザは,KLIC上でこういった組み込み述語を使ってプログラムを作成し,あとはKLICコンパイラを通して実行する. 具体的な成果物は,以下のとおりである.



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