平成7年度 委託研究ソフトウェアの中間報告

(8) 高度問題解決のための推論プログラムの開発

研究代表者:井上 克已 助教授
      豊橋技術科学大学 工学部 情報工学系


[中間報告]

1)研究進捗状況
本研究では、高度問題解決で重要となる非単調推論とアブダクショ ンの実現を容易にするために、アブダクティブ論理プログラミング (ALP) として、ユーザに身近なプログラミング方式を整備し、そ の高速な計算方式の開発を目指している。このために、これまでの 研究代表者の研究成果である各種のプログラム変換理論に基づき、 アブダクションを一階述語論理の枠組にコンパイルし、変換された 論理式に関して、定理証明器 MGTP を用いて計算を行い、ALP 計算 を実現する方式を Prolog で実現する。これまでに、ALP の処理系 は第一版が完成し、現在はその効率化に向けた検討を行っている。 応用としてアクション言語の処理系を構築する検討も進行中である。

2)現在までの主な成果
まず、MGTP を用いた選言と否定の付いた論理プログラミングの解 集合計算のためのプログラム変換器を Prolog で構築した。ここで は、失敗による否定 (NAF) の非単調な効果の計算に対して、モデ ルを分岐させる方式を取った。次に、アブダクションを計算するた めの Skip 方式に基づく変換器を Prolog で構築した。さらに、こ れらの処理を結合し、ALP の信念集合を求めるプログラムを開発し た。これにより、NAF とアブダクションを同時にプログラム上で記 述したときに、期待される計算が行えるようになった。これらの処 理系を論理回路設計の例題で評価したところ、これに関しては所望 の結果を得ることができた。

3)今後の研究概要
本年度の研究目標であったところの「ALP の Prolog 処理系の実現」 に関しては、取り敢えず正しく動くものが出来ている。しかしなが ら、グラフ理論の NP 完全問題に適用した時に、海外で提案されて いる他の方式に比べて良い結果が得られていないため、現在改良を 検討している。具体的には、MGTP が全解探索を行うところを、一 つの解が得られたときに止まるような改良を加える予定である。な お評価と改良以外で今後残された課題は、当初の計画にあった通り、 マニュアル・説明書の整備がある。さらに、2年計画において来年 度の計画にあった通り、状態変化が記述・推論できるアクション言 語の処理系設計のための検討をさらに進める。

4)今年度目標成果
提案書に記載した当初の成果目標は達成出来そうである。すなわち、 成果物のソフトウェアとして、「ALP-MGTP: アブダクティブ論理プ ログラムの処理系 (Prolog 版)」がリリース出来る見込みである。 このソフトウェアは、ALP の信念集合をボトムアップに計算するほ か、ALP に対する質問応答が可能であり、与えられた質問に対して 条件となる仮説を付けて解を返す「アブダクション機能」を有する。 また、従来のシステムとは異なり、ヘッドに選言が記述できるため、 現存する手続きの中では、最も広いクラスのプログラムを処理でき るものとなる。



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