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物理化学的相互作用計算を基とした膜タンパク質判別及び二次構造予測法 の確立

膜タンパク質は、生体膜と分子レベルで相互作用しており、その相互作用は膜タンパ ク質立体構造の形成及び安定性に大きく寄与している。このことは他の水溶性タンパ ク質と大きく異なるところである。よって膜タンパク質の立体構造を予測する場合に は、まずアミノ酸配列の生体膜に対する形態(トポロジー)をおさえことが重要である。そこで本研究では、生体膜が非常に疎水的な環境であることを考え、疎水性相互作用 を基とした、(1)アミノ酸配列が生体膜と相互作用するか否かを判別(膜タンパク 質判別)するモジュールと(2)実際にアミノ酸配列のどの部分が膜内に埋め込まれ ているかを詳細に予測するモジュールを構築する計画である。以下に各モジュールに ついて説明する。

膜タンパク質の判別モジュール: まず、アミノ酸に疎水性指標を割り当て、連続し た数値列にする。このプロットを用いて最初に全体の平均疎水性値を求める。続いて 疎水性プロットの周期性解析(最大エントロピー法)を行う。これにより疎水性領域 の変化をとらえることができる。特に20〜30残基の周期性(長周期性)は、生体 膜の厚さに相当しておりアミノ酸配列が生体膜を貫通しうる情報としてパラメータ化 できる。よって膜タンパク質判別では水溶性タンパク質と膜タンパク質のそれぞれの 平均疎水性値と長周期性から散布図を作成し膜タンパク質構造が判別できる境界を決 定する。この判別ではすでに99%の精度が確認されており、現在、ソフトウェア化 が進められている。

膜タンパク質二次構造予測モジュール: 膜貫通ヘリックス予測に関する考え方は、 以下のとおりである。膜貫通ヘリックス形成には2段階の過程がある。一つは膜貫通 コアの形成であり、もう一つは立体構造形成の途中で起こるヘリックスの変化である。 (1)膜貫通コア形成には二つのメカニズムがある。一つは膜貫通領域については非常に 疎水性の高いセグメンが一定以上連続した場合で、本来膜に入り易い性質を持った ヘリックスである(構造型ヘリックス)。 他方は親水残基を比較的多く含むヘリックス で、機能部位を構成すると考えられる(機能型ヘリックス)。(2)膜貫通へリックス形成 には立体構造からのフィードバック過程も考慮しなければならない。膜タンパク質の 場合、膜の厚さがほぼ決まっており、本来膜貫通へリックスになりにくい部分もコアの 存在によって膜内に引きずり込まれると非極性の環境下で水素結合ができ、ヘリックス を作ったり、まわりのヘリックスと結合したりする。そのようにして膜貫通ヘリックス の領域も一般に伸びることになる。 このように本研究では、(1)により膜貫通へリックスの存在を確認し、(2)により膜貫 通領域を推定する。



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