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研究の背景と目的

研究の背景

LSI集積度の急激な増大と設計手法の高度化のために、LSI設計自動化(LSI CAD)ツールの計算時間はますます増加傾向を示し、並列処理による計算時間短 縮の必要性は研究者の間ではしだいに議論されるようになった。しかしながら 依然として、現実のツールが並列化される動きはきわめて鈍い。この理由には、 CAD ベンダーが提供する LSI 設計自動化ツールは、LSI 製造プロセスの急激 な進歩に追従するのがやっとで、並列処理による処理速度向上/機能向上を指 向する余裕がほとんどなかったこと、さらに同分野特有の階層的大規模データ 構造や動的計算が、同分野の並列処理ソフトの開発をより難しいものにしてい たことがあげられる。このために、ユーザが増えず開発が進まないという悪循 環を招いていた。

このような状況を打破するためには、まず、ユーザーにとって十分魅力的でか つ実用化がこれからの最先端 LSI 設計自動化機能を並列処理ソフトの開発対 象に選びユーザを確保すること、そして、並列処理ソフト開発の難しさをなる べく軽減できるような言語や開発環境を選ぶことが重要となる。

したがって本研究開発では、KL1 と並列オブジェクトモデルに基づくプログラ ム開発の効率の高さを生かした並列ソフト開発を行うこと、また対象とする LSI 設計自動化機能としては、ここ2年間に急激に注目度の高まってきた低電 力 LSI 向けの、論理設計とレイアウト設計機能を取り上げることにする。こ れらはまだまだ研究段階でCAD ベンダーからの提供が始まっていないものであ り、開発に成功すれば多くの LSI 設計者に恩恵を与えるものとなる。

研究の目的

本研究の目的は、低電力 LSI 向けの設計自動化ツールとして、論理合成とレ イアウト合成を一体化した世界初の低電力指向シリコンコンパイラを KL1 と 並列オブジェクト指向プログラミング技術を生かして研究開発することである。 このことにより、LSI 設計自動化ツールのユーザーには並列処理の有用性と現 実性を示すとともに世界初のツールを提供し、並列処理の研究者には上記プロ グラム開発法の有効性とその中で研究開発した各種並列処理技法を提示するも のである。

研究開発の対象技術について補足する。超低消費電力を実現する基本回路方式 として、パストランジスタ論理を改良した新方式を使用する。これに基づき LSIのマクロセル/機能ブロックを単位として、論理合成からレイアウト合成 までを一貫して行なう新しい低消費電力用シリコンコンパイラを実現する。ま た上記ソフトウェアの研究開発にあたり、並列実行に適するアルゴリズムの開 発・改良と、並列実行で十分な処理時間短縮を実現するためのスケジューリン グおよび負荷バランス方式の研究開発を行なう。



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