現在、コンピュータが最も多用されている分野は、言うまでもなくビジネス分 野であり、処理データ量の増大に伴い並列化による処理性能の増強が望まれて いる。また、知識処理による柔軟で高度なシステム構築もビジネス分野の重要 な課題である。これまで、ビジネス分野は第五世代コンピュータで研究されて きた技術の利用分野としてはあまり注目されてこなかったと思われる。しかし、 並列処理要素技術という面から見ると、新たに適用できる技術も多数存在し、 特に KLIC の潜在的な能力を示す上で、非常に重要な適用分野であると思われ る。
データベース研究者の間で最近注目されているアクティブデータベースは、ルー ルによる能動的なデータベース処理の起動を行なうものである。動的な経営判 断や株の動向解析等への利用も可能なことから、ビジネス分野でも注目されて いる。これまで ICOT で研究されてきた、Kappa や Quixote は、オブ ジェクト指向データベースと演繹データベースを基礎にした、知識処理向けの 非常に優れた成果であるが、ビジネス分野に要求されるトランザクション管理 や SQL インタフェース、アクティブルール発火、更に耐故障機能と言った内 容については、別の方向からの研究が必要であると認識する。
そこで、ビジネス分野も視野に入れ、アクティブルールも扱うことのできる、 並列データベース管理システムのプロトタイプを KLIC を用いて超並列マシン 上に実現することにより、 KLIC の記述能力の高さを実証するとともに、その 適用範囲の広さを示し、第五世代技術の普及に貢献することを目的とする。今 後、多くの並列マシンに KLIC を移植する場合、ビジネス分野に利用できるデー タベース機能が準備されていることは、その普及をより魅力的にするものと確 信する。
これまで並列データベース管理システムは各種研究開発されてきたが、並列関 係演算等を並列論理型言語のプロセス間メッセージ通信によって実現している 例はない。KLIC のメッセージ通信によるシステム記述のスマートさと拡張性 および効率の良さを示すことによりその記述能力と適用範囲の広さを、更に各 種並列マシン上に実現することによりポータビリティを、示すこともできる。