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研究の内容

まずはじめに、EDR辞書用の形態素接続表を整備する。日本語解析ツールの中 核となる解析アルゴリズムとして一般化LR法を用いる。これは構文解析用とし て開発されたアルゴリズムである。一般化LR法では文脈自由文法をプリコンパ イルしたLR表をあらかじめ抽出しておく。LR表は構文解析を行なう上で指令書 の役割を果たすものであるが、そこに含まれる制約は、文脈自由文法に含まれ るのに限られる。形態素間の接続表に関する制約は含まれない。

ところが我々は最近、LR表に形態素間の接続表に関する制約を組み込む新しい 方法を開発している。この方法によれば、LR表には文脈自由文法の制約と接続 表の制約とが同時に含まれていることになる。このLR表を用いて、一般化LR法 に基づく解析を行なえば、形態素解析と構文解析とを完全に融合することがで きる。この新しい方法によれば一般化LR法という一つの解析アルゴリズムを用 いて形態素解析と構文解析とを同時に進めることができるので効率的な解析を 行なうことができる。本研究ではこれらを組み込んだ効率の良い日本語解析用 ツールを、EDR辞書をベースに構築する。

このときの一つの問題は、一般化LR法で用いるLR表生成アルゴリズムの生成速 度が、文脈自由文法規則の数が増えるにつれて極端に遅くなることである。ち なみにATRで開発したLR表生成システムでは、三千弱の文脈自由文法規則のLR 表生成を行なうのに、20MIPS程度のワークステーション上で数日動作させても LR表の生成ができなかった。本日本語解析システムをツールとするためには、 それに組み込むLR表生成プログラムが十分高速でなければならない。われわれ は、ATRのLR表生成プログラムが低速である理由を検討しており、中間段階で できるデータ構造を変えることで、十分高速なLR表生成が可能であるとの見通 しを得ている。本研究で開発する日本解析システムには、このLR表生成アルゴ リズムを組み込む。そして、LR表に形態素間の接続表の制約を組み込むアルゴ リズムを開発する。

最近LR表に接続表の制約を組み込むことで、LR表中のある指令をつぎつぎに削 除し、LR表から無用な指令を消し、LR表をコンパクトにするとともに、このLR 表を用いた解析の効率を向上させる方法を開発した。これは制約伝播法と我々 はよんでいる。制約伝播法の、LR表への組み込みアルゴリズムの、LR表生成プ ログラムへの組み込みを行なう。

一般化LR法は横型探索法をベースにしている。そのために並列計算が可能であ り、その有効性は昨年までのICOTの委託研究により明らかにされている。本研 究で開発する日本語解析システムをKLICを用いて記述することも検討する。検 討結果により、2年度に実装を行なうためにICOT委託研究への応募する。

最後に、日本語解析システムのツールとしての使用を容易にするためのユーザ インタフェースを開発する。



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