next up previous
Next: 研究の成果 Up: 「並列論理型言語を用 いた最尤法による分子進化系統樹作成プログラムに関する研究」に関する成果 概要 Previous: 研究 の背景と目的

研究の内容

本研究では、最尤法を用いた分子進化系統樹作成プログラムの核となるべきプ ログラムを試作し、並列環境でその効率を調べた。contour/1により、 対数尤度曲面を生成することで、われわれは最尤値を与える点に至るまでの、 曲面の変化の様子を知ることができる。また、このプログラムはふたつの並列 実行方法のいずれかを選択することができ、両者の比較が可能である。 contour/1は、疑似的にトポロジー空間の探索の際の負荷分散の様子を実 現しているので、並列論理型言語を用いた最尤法の効率についてある程度の予 想を立てることができる。一方、traverse/3は、系統樹のすべての 枝を横断的に変化させることにより、最尤値を与えるような枝長の組み合わせ を探索する。別な言葉で言えば、枝長空間の探索を行う。 traverse/3でアミノ酸データを扱うためには、積極的な高速化が必 要である。そのための手法についても研究を行なった。

実験においては、単純な人工的なデータと、遺伝情報データベースから採取し た実際の生物のデータの両方を用いた。同一の人工的なデータを他の方法(最 大節約法)で処理し、その結果を比較することで、本プログラムの正当性を確 認した。さらに他のグループが作成した最尤法プログラム(DNAML)の結果との 比較も行った。PIM/mで64プロセッサを用いたとき、contour/1にお ける台数効果は35倍から45倍であった。樹形空間の探索においても、同程度の 台数効果が期待できると思われる。

現実の生物データは、分子モーターの一種であるミオシン分子の軽鎖を用いた。 この分子は進化的変異が比較的大きいので、進化的に保存された領域のみを解 析対象とした。その結果、ある樹形のもとで、距離行列法(近隣結合法)によ る系統樹の枝長を改善することができた。



www-admin@icot.or.jp