<英語版>


第五世代フリーソフトウェアの構成


第五世代フリーソフトウェアには、次のようなソフトウェアやドキュメントから、 構成されています。

  1. 第五世代プロジェクト及び第五世代構成プロジェクトで開発された100本の ソフトウェア。これは、ICOTフリーソフトウェア(IFS)と呼ばれる。

  2. AITECは、IFSのさらなる普及振興を図るため、「拡大IFS研究開発計画」を実施する こととした。この計画は、第五世代普及振興部が担当し、2つの方法で行われた。

    1. AITECの第五世代普及振興部が、その部員である技術者やソフトウェアハウスの 要員を自己資金により雇用して実施。KLICや並列定理証明システム、知識ベース 管理システム(Quixote)などの主要なシステムの、保守、改良、一部のプログ ラムの書き直し、及び、新規作成などが行われた。

      特に、講習会や普及のための解説や教育用テキスト作成などにも力を入れた。 このようにして作成されたAITECの開発したソフトウェアやドキュメント。

    2. 第五世代プロジェクトで活躍した中核的研究者が多数有力大学へ、 教授、助教授などとして、移籍していた。これらの大学の研究者を 主な対象として、研究開発委託として実施した。 これを「拡大IFS研究開発プログラム」と呼んだ。

      実施に当たっては、 これらの研究者に対して研究開発テーマを公募し、 オープン、かつ 競争的な方式で選考し委託した。4年間にわたり、 IFSの改良、拡張や、新規に知識処理や並列記号処理分野の ソフトウェア作成を行った。この拡大IFS研究開発プログラムによって 作成されたソフトウェアはのべ70本となった。

        (H7年度 22本、H8年度 27本、H9年度 22本、H10年度 19本)

  3. KLI言語とその汎用機上の処理系KLICの普及を目的として、実施したKLIC プログラミングコンテストにおいて応募され、入選したソフトウェア。 これらも、第五世代フリーソフトウェアの一部となっている。


第五世代フリーソフトウェアの開発経緯


  1. わが国のナショナル・プロジェクトであった「第五世代コンピュータ・プ ロジェクト (1982-1992)」やその後継プロジェクトであった「第五世代コンピュー タ研究基盤化プロジェクト(1993-1995)」は並列知識処理のための数多くのソ フトウェアを生み出しました。これらのソフトウェアは一定の公開条件の下で 「ICOTフリー・ソフトウェア」という名で広く公開されてきました。

  2. 1996年、ICOTの解散と共に(財)日本情報処理開発協会(JIPDEC)と、 翌年、JIPDEC内に設立された「先端情報技術研究所(AITEC)」がICOTの第五世代 普及振興事業を引継ぎました。

    1. AITECは、 ICOTフリーソフトウェア(IFS)のさらなる普及を目的とし、 自主事業として、「拡大IFS研究開発計画」を開始しました。この一環として、並列論 理型言語KL1の汎用機用処理系KLICを市販の並列サーバ(並列Unixマシン)上への移植を 始め、遺伝子情報処理システムや法的推論システムなど、重要な並列記号処理や 並列知識処理ソフトウェアの改良・拡張を実施しました。

      KLICシステム等は、ほどんど書き直され機能、性能ともに大幅にアップしました。 さらに、KLIC講習会などを開催し、同時に教育用の解説資料などを充実を図り、 この分野の先進的研究成果が大学などに継承してもらう努力を行いました。

    2. このような自主事業と並行し、AITECは、大学へ教授、助教授などとして移籍した 第五世代プロジェクト関連研究者(第五世代のOB研究者)の支援と、この分野への 新たな研究者の参入の促進を目的として、大学への委託による「拡大IFS研究開発支援 プログラム」を実施しました。このプログラムは、1995年から1998年までの 4年間実施され、多くの大学の先生方やその研究室のメンバーの参加を得ました。 その研究開発の中で作成されたソフトウェアは、IFSと同様の条件で公開して います。

    3. このほかの自主事業としては、KL1言語の普及を目的として、KLICプログラミング・ コンテストを実施し、大学院や学部の学生などから多くの応募を頂きました。 このコンテストの入選作も、応募者の協力を得て公開しております。

  3. 第五世代フリーソフトウェアとは、このようにして開発されたソフトウェアや 解説書などのドキュメントの総称です。第五世代フリーソフトウェアは、現在では、 そのまま動作するものは少なくなっています。

    しかし、インターネット上に分布する無数の知識ベースなどから、目的とする知識の 集合を収集しようとインテリジェント・エージェント技術や、自然言語処理技術を 応用し、ホームページから有用な知識を収集する技術などが活発に研究されるように なってきました。再び、人工知能や知識処理の技術が求められう時代となって きました。第五世代フリーソフトウェアは、このような技術の基礎となる多くの 先駆的な技術や手法を含んでいます。

  4. 当然、現在も研究が継続されている第五世代フリーソフトウェアがあります。 並列記号処理や知識処理に関する重要なものは、今日においても、いくつかの 大学や研究組織、メーカ等において、研究開発が継続されています。 これらについては、それらの研究開発を継続している大学の研究室などを紹介して いますのでご参照ください。