平成7年度 - 8年度 技術調査部の活動報告

先端情報技術研究所(AITEC)
技術調査部

平成8年11月

AITECも昨年10月に発足し、技術調査部のメンバーも、昨年度末から徐々に5名がそろいその活動も軌道にのってきました。ここでは、平成7年度および8年度前半の活動状況について紹介します。

1.先端情報技術に関する調査研究等

(1) 技術調査事業の経緯

 近年、米国を中心として、情報分野においては、いわゆるパラダイム・シフトが起こり、 新しい技術の研究開発と普及が急速に進展しております。

わが国としても、ネットワーク技術やマルチメディア技術など新しい情報技術の開発を一層強化するよう迫られています。このため、日本としての適確な対応策を早急に検討する必要から、米国を主体とした諸外国の先端的技術開発や情報産業の動向、技術開発政策や制度等について調査研究を行うことといたしました。

平成7年度は米国の政府機関における先端情報技術分野への研究支出の現状について調査しました。この結果、米国政府機関の情報技術への研究開発支出は約27億ドル(2700億円)であり、このなかでも、HPCC(High Performance Computing and Communications)は、11億ドルを占めていることからHPCCに重点をおいて掘り下げた調査を行いました。

また、米国では、研究開発の最終目標は商業化実用化であると考え、その基となっている政策や制度、例えば研究者、研究所などが、経済的な利益追求に向けて自発的に行動することを促す仕組みや法的処置(Bayh-Dole法など)についても調査しております。

また、米国の研究テーマは次のように大きく分類できることがわかりました。

  


これらの中でも、全体システムのプロトタイプ開発が特に重要であり、日本では、全体システムのプロトタイプ開発が行なわれることが少ないのが問題であることがわかってきました。全体システムプロトタイプ開発は、基礎技術開発の評価を明確にし、さらに商業化を促進することから、産業の競争力強化にとって重要な役割を果たしています。

平成8年度は、7年度の調査をさらに進めて、基礎技術の研究開発における技術戦略を 通じて、情報産業の競争力の確保をいかに行うかを調査研究しています。


(2) 活動状況

(a)基礎技術の研究開発のあり方に関する調査と試案の検討

   --21世紀に向けた情報技術の研究開発のあり方に関する調査--

 情報産業の国際競争力の確保は、他産業への波及効果の観点からもきわめて重要であり、わが国の研究開発が総体として効率的に行なわれることが、競争力の強化につながることから、わが国の情報技術の研究開発のあリ方について委員会(委員長 後藤滋樹早稲田大学 情報科学部教授)を設置し、調査研究する計画です。

検討予定の課題:

  ・実態を踏まえた研究開発モデルの構築
  ・このモデルに基づく企業、大学、政府の役割分担
  ・この分担に基づく技術戦略、研究開発ポートフォリオと更新のメカニズム


(b)重要な先端情報技術例の研究開発動向の調査
  
(イ)ペタフロップス・マシン研究動向調査

 米国では、HPCC計画の一部であるテラフロップスマシンの研究開発のあとをうけて、1991年より、20年後を目標に、さらに1000倍の性能を持つペタフロップスマシンの開発をスタートさせています。わが国としても極めて重要な研究開発であることから「ペタフロップスマシン技術調査ワーキンググループ(主査:山口喜教 通商産業省電子技術総合研究所 計算機方式研究室長)」を設置し、調査研究を進めています。


(ロ)ネットワークとAI関連の情報技術の研究開発動向調査

 インターネットに代表されるネットワークに関連する新技術及びAI技術を中心に、将来の情報産業の土台を生み出すと思われる基礎技術分野や重要と思われる研究テーマを抽出するとともに、その研究を効率的に進めるのに必要なインフラの整備やそのような研究開発投資の将来における社会への波及効果について調査することを目的として、「ネットワーク及びAI関連新技術調査ワーキンググループ(主査:奥乃 博 日本電信電話株式会社 NTT基礎研究所主幹研究員)を設置し、調査研究を進めています。